今後の活動
「はい」
『“shiori“、俺だけど。事務所の入り口は、ファンや記者でごった返してるから、裏から入ってきてくれ』
マネージャーからだ。
「裏からって、車どうしたらいいんです?」
『shiori、運転できたっけ?』
不思議がられる。
「私は出来ませんけど、旦那が運転してるんで…」
私がそう答えると。
『そうか…。なら、そのまま地下駐車場に入ってもらって、そっちならそんなに人いないと思うから…』
「わかりました」
そう言って、電話を切った。
「電話、何だって?」
「ん。事務所前の入り口にファンや記者でごった返してるから、裏から入ってこいって言われたけど、車ごと地下駐車場に入れって…。マネージャーから」
私が、そう告げると。
「わかった」
護は、その一言だけ言って、ハンドルを切って、地下へ車を入れた。
地下駐車場に車を止めて、降りるとマネージャーが待機していた。
「遅くなりました」
「いいよ。さっきのニュースの事だけど…」
マネージャーから話し出す。
「すみません。生徒が勝手にブログにアップしてしまったみたいで…」
護が、頭を下げた。
「とりあえず、詳しいことは後で、社長も待ってるから…」
「はい」
私たちは事務所の入ってる五階まで、エレベーターで向かった。
「社長。shioriが来ました。旦那さんも一緒です」
マネージャーが社長室のドア越しに声をかける。
「入ってくれ」
ドアを開けて、中に入る。
「失礼します」
私は、一礼して中に入る。
「shiori。待っていたぞ。あのニュースの事だが、どういう事だ?」
社長は、私の顔を見るなり切り出してきた。
「順を追って話しますと。旦那の忘れ物を届けに行って、その場で話をしていたら、生徒に見つかってしまったんです」
私の言葉に。
「見つかったって…。普段そんなにオーラがないお前がか?」
訝しげな顔をする社長。
「そのぉ……。自己紹介をして、名前を聞いて直ぐに気付いた生徒がいて、いつの間にか囲まれてしまってて…。写真を撮ってた子もチラホラいたので、足早に逃げてきたんですが、すでに遅かったみたいで……」
「そうだったのか。まぁ、カミングアウトするのが早まっただけだ。気にするな」
社長は、苦笑する。
あの事も今のうちに話した方がいいよね。
私は、護の顔を見た。
護も頷いてくれた。
「社長。もう一つ言わないといけないことが…」
私が口を開くと。
「なんだ?今更驚くことはない。はっきり言ってくれ」
社長が、腹をくくったのがわかった。
「子供が…」
私が言い淀んでると。
「子供が、どうしたんだ?」
とマネージャーが聞き返してきた。
「私、妊娠したみたいで…」
「妊娠だと…」
社長が、落胆した。
「本多。お前は、知っていたのか?」
「私も、初耳です」
マネージャーの驚愕した顔。
「今年は、デビュー五周年のイベントをと思ってた矢先だったんだぞ」
社長の顔が、怒りで赤くなる。
「すみません」
「おろす気は、無さそうだな」
「はい。旦那もおろすなと言ってるので…」
「そっか……。今から、会見を開く。それから、イベントの件だが、産休前にアルバムとシングル製作とそれにちなんだコンサートだけは、こなしてもらうからな」
社長が、疲れきった顔つきで言う。
「わかりました」
私は、承諾した。
その横で、護が心配していた。