スクープ?
正門には、騒ぎを聞き付けたライターが待ち構えていた。
うわー。
凄い人数。
とりあえず、オーラ(?)を消さなきゃ…。
普通の主婦を装いながら。
「守衛さん。さっきは失礼しました。以後、お見知りおきを…」
と、声かけをして、正門から出る。
すると。
「アーティストの“shiori“さんですか?
と、マイクを向けられた。
「誰ですかそれ?私は、知らないですけど…」
と、とぼけた。
本人です。
何て言えない。
「でも、今、ネットに…」
って、声。
生徒の中にネットに流した子がいたんだ。
「人違いですよ。よく間違われるので…」
私は、そう言いながらその場を離れた。
はぁー。
せっかくの休みが、くたくただよ。
私は、家に帰り着くなり、ベッドに倒れ込んだ。
いけない。
お昼食べて、夕飯の買い出しにいかないと……。
でも、体が動かない。
やばいな。
子供たちのお迎えも行かないと…。
私は、気合いを入れて立ち上がる。
…が、足に力が入らなくて、その場で崩れた。
はぁー。
そんな時だった。
鞄に入れてた携帯が鳴った。
携帯を取り出して、出る。
『もしもし、詩織?』
久し振りに聞く里沙の声。
「どうしたの?」
『今、テレビ見ることできる?』
やけに慌ててる。
「えっ、うん。できるよ」
私は、気合いを入れて立つと、リビングに移動した。
テレビを点けると。
『スクープです。今まで、私生活を一切公表しなかった、アーティスト“shiori“が、この学校に突然現れたようです』
ワイドショーで、騒ぎ立てられている。
って、私何かの怪物ですか?
他の局でも、同じような放送をしてる。
『どうするの?』
里沙に言われて。
「たぶん、記者会見開くんじゃないの?」
私は、他人事のように言う。
『そんな、他人事みたいに言わないでよ』
里沙から、咎められる。
まぁ、里沙にとったら、そうかも…。
「実は、前から、そろそろカミングアウトしようかって、事務所も言ってたところだから、会見が早まるだけだと思うよ」
私は、里沙には本当の事を言うようにしてる。
『ならいいけど…』
まだ心配そうな里沙に。
「護ともその話をしてたところだったから」
今朝の事も言うと。
『そうなんだ…』
「それにね。まだ、護には伝えてないことなんだけど、三人目ができたかも……」
って、口にしたときだった。
ガタッ。
リビングのドア付近から音がした。
振り向くと、護が驚いた顔で、立っていた。
「詩織。それ、本当か?」
護が、私に近付いてくる。
えっと。
「ごめん、里沙。また、後でかけ直す」
そう告げて、電話を切った。
「詩織。さっきの本当か?」
護が、私の肩を掴む。
「病院で確かめてきたから、嘘はついてない」
護は、私の言葉を聞いて、抱き締めてきた。
「本当は、悩んでたんだよね。おろそうかって…」
「何でだよ?」
護が、悲しそうに言う。
「護も忙しそうだし、子供たちを寂しがらせてる私に、もう一人産んで育てることが、できるんだろうか?って、ずっと悩んでた。私は、母親らしいこと、何一つもしてあげられて無いのに、この子を産んでも大丈夫なのか?って…」
自分の胸の内をさらけ出す。
「オレは、会いたい。お前の中で育ってる、その子に会いたい」
護が、優しい声で言う。
「だから、幼稚園のPVやら、コンサートの事を子供たちにって言ってたのか?」
私は、静かに頷いた。
「子供たちに見てもらいたかったんだ。もし、この子を産んだら、一年はブランクが出る。その間にアーティスト“shiori“は消えてしまうかもしれない。だったら、今のうちに……。私が、活動してる内に見て欲しかったんだ」
「そうだったんだ。わかった。無理だけはするなよ、詩織」
「…また、双子だったって言ったら」
私は、けしかけるように言う。
「マジかよ…」
って、護が絶句した。
その時、私の携帯の着信音が、部屋に鳴り響いた