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話し合い



「ごめんな、詩織。ここのセキュリティー万全なの忘れてた。」

と、護が肩を竦めて言う。

「いいよ。護が来てくれたから、中に入れたんだもん。」

私は、ニコニコしながら言う。

「今日は、時間あるのか?」

「うん。さっき、マネージャーに確認したから、今日は、一日OFFだって。」

「そうか。」

護が、笑顔で言う。


「ねぇ、護。響が私の性で悩んでたの知ってた?」

私の質問に護の顔色が変わった。

知ってたんだね。

「じゃあ、来週の父兄参観日の事は?」

「それも、知ってる。」

護が、静かに答える。

「私、今日、初めて聞いた。響とかなでが、私のせいで、嘘つき呼ばれされてることも……。」

「うん。」

「何で、早く言ってくれなかったの? 護が、私の事を気遣って言えないでいたのは、わかるけど、話してくれなきゃ、解決できないよ。」

私は、護に攻め立てながら悲しくなってきた。

また、私は、除け者なの?

「ごめん。詩織の負担になるのを避けたかったんだよ。子どもの言うことなんて、直ぐに忘れるだろうって、思ってた。」

護が、弱々しく言う。

「私。今日、響の口からはっきり聞いたんだ。でね、父兄参観日の日に幼稚園の園庭を使って、PVを撮ることにしたから……。」

私が言うと、護が驚いた顔をする。

「なんで、また…。」

「“子供たちに私のお仕事を知ってもらいたい“って、さっきも言ったよ。その一貫で、お仕事の事知って欲しかったから…。私一人で作るんじゃないってことを知って欲しい。いろんな人が、携わって一つの作品が出来るんだってことを身を持って感じて欲しい。」

私の言葉に。

「わかった…。詩織の思い、響の思い各々が交差してるんだな。」

厳しい顔つきではあったが、納得してくれた。

「響がね。凄く我慢してたんだって思ったら、いてもたってもいられなくて、マネージャーに電話して、無理を言ってたのんだ。子供たちをPVには出さないって、条件もつける。響きに "ママは歌手なんだよ。僕は、嘘なんか付いてないよ“ って、自信を持たせてあげたい。」

「わかったよ。その日は、オレも行くから……。」

護が言う。

エッ……。

「一様、その日の午前だけ、有給をとらせてもらってるんだ。詩織は、忙しそうだったから、ね。」

「そっか…。ごめんね。これは私の我が儘だと思う。でも……。」

言葉を続けようとしたが、詰まった。

「詩織は、子供たちの事を考えての事だろ。オレは、その気持ちを汲むよ。」

護の優しい笑顔。

その時だった。

授業が終わったのか、生徒がワラワラと出て来た。


「玉城先生。その人、誰?」

生徒の一人が、声をかけてきた。

「オレの奥さん。綺麗だろ」

護が、ニコニコしながら自慢気に言う。

「玉城の妻の詩織って言います。よろしくね」

私が言ったとたん。

「詩織さんって、あの“shiori“さんですか?」

あのって、どういう意味だろう?

私が、返答に困ってると。

「そうだよ。オレの奥さんアーティストの“shiori“なんだよ」

護が、誇らしげに言う。

それを聞いてた、周りに居た生徒たちが、集まり出した。

「本物?」

エッと、これはどうしたら…。

「キャー、メチャ綺麗!」

「その細さで、子持ちって…」

生徒に囲まれて、困ってると。

「生徒会長の矢田ですが、文化祭のステージに立ってもらうことって、可能ですか?」

質問される。

「エッと、それは、事務所に言ってもらわないと…。」

戸惑いながらも事務的に答える。

「おいおい。そんなに集まるなよ。今の事、ここだけの秘密な。」

護が、生徒に言う。

「玉城先生。自慢の奥さんでしょ?」

生徒に質問されると。

「当たり前だろ。こんないい女、他に居るかよ。」

生徒の前で自慢気に言う。

なんか、フラッシュたかれてる。

これは不味いのでは……。

「先生。今度、奥さんとの馴れ初め聞かせてください。」

女子生徒が、興味津々で護に言う。

それに対して、護がたじろぐ。

「護。私、そろそろ帰るよ。さっきの話の続きは家でしよう。」

「わかった。」

私は、その返事を聞いてそそくさと正門に向かって歩き出した。






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