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再始動

あれから一年。

私は、無事に双子を産み落とした。

その双子は、両方とも男の子。

かなでは、女の子がほしかったみたい。

それでも、弟たちを可愛がってくれる。

私は、子守唄変わりに自分の歌を聞かせてる。

世間は、私の事を忘れていた。

私は、それでもいいと思っていた。

長くやってたわけじゃないからね。

そんなときだった。

「詩織。支度してこい」

突然護が言う。

「何?」

不思議に思いながら、準備する。

「ねぇ、どうしたの?」

聞いても答えてくれない。

「子供たちは?」

「お義母さんに預けてきた」

預けて?

「何があるの?」

「何でもいいから、早く行くぞ」

私の疑問も解けず、車に乗せられた。

「ここからは、目隠しさせてもらうぞ」

護が、バンダナを取り出して、私の目を覆う。

一体、何処に連れていく気なんだろう?

「一体何があるの?」

「まだ、話せない」

って答えしか返ってこない。

何なの?

暫く沈黙が続いたかと思ったら。

「着いたぞ」

車が止まって、護がそう告げた。

「目隠しはずしてもいい?」

「まだ、駄目」

護が、車から降りて助手席のドアを開ける。

「詩織。今から抱き上げるから、大人しくしてろよ」

って言ったかと思うと浮遊感が……。

パタン。

ドアが閉まる音。

そのまま護が歩き出す。

なんだろう?

耳に歓声が聞こえてくる。

「おっと、shiori」

この声、何処かで聞いたことある。

「ドア、開けてもらえますか?」

「ああ」

どこかの部屋に入った?

「目隠し外すよ」

護が丁寧に目隠しを外す。

目が少し眩んだが、慣れるとそこは小部屋。

一年前に見た楽屋。

「shioriさん。ご無沙汰ですね」

って…。

エッ……。

スタイリストさん?

「一年前とスタイル変わってないって、凄い」

メイクさんまで…。

エッ…これって……。

一体……。

「shioriさん。今日の衣装は、真っ白なワンピースです」

衣装って…。

まだ把握できずにいる私に。

「詩織。今日は、復帰第一段として、お帰りコンサートを開催するんだよ」

横にいた護が言う。

「そんなこと聞いてない」

「そう。でもファンは待ってるよ。shioriの帰りを」

護が言う。

「…ウソ」

「嘘じゃないですよ。皆shioriさんを待ってます」

メイクさんが言う。

「告知してないよね」

「本人だけが知らされてなかったんですね」

スタイリストさんまで…。

「このコンサートは、ネットでしか扱ってなかったからな。詩織は、ネットしないし…」

護に言われる。

「……ッと。そろそろ開演時間だな。オレ、客席で見てるからな」

護が、楽屋を出ていく。

「shioriさん、着替えてもらえますか?」

「ええ…」

私は、用意された衣装に着替える。

「本当に双子を生んだんですか?」

って、聞かれて。

「双子ですよ。男の子二人」

私が答えると。

「それなのにその体型ですか?」

二人が羨ましそうに言う。

アハハハ…。

「詩織。準備できたか?」

優兄が、部屋に入ってきた。

「私。ステージに立ってもいいの?」

私が聞くと。

「それは、俺じゃなくここに来てるファンに聞けよ」

優兄が、私の背中を押す。

楽屋で二人の笑顔に見送られながら。



ステージ中央に立つとスポットが当たる。

『shiori、お帰り』

会場のあっちこっちから届く声。

私は、マイクを通して。

「皆。私、ここに帰ってきてもいいの?」

問いてみた。

『帰ってきてほしいよ』

『待ってたんだよ』

『生のshioriの声、聞きたい』

って、声が聞こえてきた。

「ありがとう。ただいま、帰ってきたよ」

私は、自然と笑みを浮かべた。

『おめでとー!』

って声が上がる。

「ありがとう。元気な双子の男の子だったよ」

『おめでとう』

「ありがとう。それから、今日のコンサートだけど。私、たった今知ったばかりで、何を歌うかなんて、決まってなくてぶっつけ本番だから、もし歌詞間違えたりしたら、ゴメンね」

って言うと、会場から笑いが起こった。



そして、イントロが流れてきた。

私は、自分の曲を熱唱するのだった。


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