家族共演
監督の説明の段取りを把握し、PV撮影に挑んだ。
途中、ジャングルジムの頂上に座ってみたり、降りる時には下から護に抱き上げられて降りたり、庭園を二人で駆け回ってみたり(ドレスだから、走りにくいけど…)足が縺れて倒れそうになったところを支えてもらったり、護が、傍に居てくれるだけで自然に笑みが溢れてきて、凄く楽しい撮影になった。
「最後のシーンに子供を入れたいんだが、二人に似てる子供を探してこい」
って、声が聞こえてきた。
私は、護の方を見る。
一瞬戸惑った表情を見せたが、頷いてくれた。
「監督。うちの子達を使ってください」
私は、監督に申し出た。
「shioriの子供か…。男の子、女の子どっち?」
「両方です」
「本当か?助かる」
一瞬驚いた顔を見せる監督。
そして、直ぐに安堵の表情を見せる。
「今、呼んできます」
私は、それだけ告げると二人の教室に向かった。
「先生。すみませんが、うちの子二人少し抜けさせて貰ってもいいですか?」
一応、声を掛けてみた。
先生も父兄も、子供たちも私の姿に驚いて、見入ってる。
えっと……。
「あのー?」
「…えっ、あっ、はい。どうぞ……」
いくらなんでも、見入りすぎでは?
でも、なんとか許可(?)をもらった。
「響、かなで。ちょっと来てくれるかな?」
「はーい」
元気な返事をして二人が来る。
「ママ、綺麗」
キャッキャはしゃぐ子供たち。
「こら、静かにしないとね。他の子に迷惑が掛かるでしょ」
「「はーい」」
って、素直に返事する二人。
私は、二人を連れて監督のところに戻る。
「お待たせしました」
「本当にshioriの子供?」
監督が、問いてきた。
「そうですよ。双子なんで、そっくりでしょ。二人とも挨拶は?」
私が、二人に促す。
「玉城響です。よろしくお願いします」
「玉城かなでです。よろしくお願いします」
二人は、そう言ってお辞儀する。
「良くできました」って誉めてあげたい。
親バカって言われそうだけど……。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
監督が、目を細めて子供たちに挨拶する。
「shioriの躾って、徹底してるんだな」
感心されても、なぁ……。
「これは、私がじゃなくて、旦那がですけど……ね」
言い訳じみた言葉を募る。
「旦那さん、何してる人?」
「教師なんで、そこはきちんとしてるんですよ」
苦笑する、私。
「なるほどな。で、二人にやってもらいたいのは……」
って、監督が二人に説明し出した。
「二人とも、わかった?」
監督の説明が終わり、二人に訪ねる。
が、困惑してるのか難しい顔をしてる。
「まま。もう一回教えて」
わからなかったか…。
「じゃあ、ママとパパで見本を見せるから、同じようにやって見せて」
私が言うと二人は、頷いた。
私は、護の方を見る。
「護、お願い」
「うん、わかったよ」
私たちは距離をとって向かい合う。
そして、歩き出しすれ違うときに手を繋ぎ、ゆっくりと手が離れていく様を子供たちに見せる。
「「わかった。ありがとう、パパ、ママ」」
二人が、笑顔で言う。
「じゃあ、位置について準備しようか」
「はい」
二人は、元気に返事をすると位置についた。
「監督、お願いします」
私が言うと監督が頷いた。
「二人とも笑顔だよ。大好きなことを思い浮かべながらね」
カメラが回る前に私は、二人に言う。
するとキラキラの笑顔を見せてくれる。
カメラが回り、さっき見せた動きをする二人。
「はい、オッケーです。お疲れさまでした」
って、監督の声が聞こえた。
色々と突っ込みどころあるとは思いますが、そこはスルーして欲しいです。