準備
休憩時間になったのか、子ども達が出てきた。
「あっ、優基おじさん発見」
って声が聞こえてきたかと思うと、響が思いっきり優兄に飛び付いた。
「おっ、響。お前、元気だな」
優兄が、響を抱上げて頭を撫でてる。
「ママ。パパは?」
かなでが、私の服を引っ張る。
「パパね。お家に忘れ物を取りに……」
って言い終わる前に戻ってきた。
相変わらず、息一つあがってないし……。
「ほら、取ってきた」
護が、紙袋を渡してくる。
「私より、護の方が着替え大変でしょ?先に異が得てきていいよ」
「わかった。優基」
護が、優兄を連れて行く。
「「ママ。パパが出るの?」」
二人が同時に首を傾げて聞いてきた。
「うん。優基おじさんが、嫌がったからね。パパが、代わりに出ることになったの」
私が、そう告げると嬉しそうに。
「「やったー!」」
って、叫ぶから慌てて。
「二人とも、他の人の迷惑になるから、叫ばないの」
ただでさえ、園庭を使えなくしてるのに……。
「ごめんなさい」
二人ともシュンと落ち込んじゃった。
反省してくれたみたい。
そこに、タキシードに着替えた護が出てきた。
自前のタキシードだ。
「何で?護まで、自前のを着てるの?」
私の疑問に。
「そのドレスに合うように作ってあるから、仕方ないだろ」
護が、苦笑しながら答える。
「パパ、格好いい!!」
二人が、護に飛び付く。
「こら、引っ付くな」
子ども達を引き離そうとする護。
周りの父兄もザワツキ始めた。
それほど、似合ってるってことだよね。
「詩織も着替えてこいよ」
護に言われて。
「うん」
私は、ドレスのは言った紙袋をもって、ロケバスに乗り込んだ。
ワンピースを脱ぎ、ドレスに着替える。
サイズもピッタリで、自分でもビックリ。
着替えを終えて、外に出る。
「ちょ…ちょっとshioriさん。それ、反則です!」
メイクさんが、驚いた顔をする。
?
「何が?」
聞き返すと。
「そのドレス、凄く似合ってます。って言うか、そのスタイルの良さは、反則ですよ!」
って。
あっ、そっち…。
「ドレスに合うメイクに変えないと…」
さっきのメイクを落として、新たにメイクし直す。
そこに。
「やっぱり、ピッタリだったな」
護が、してやったり顔で言う。
「これは、これで恥ずかしいんだけど……」
「いいじゃん。綺麗なんだから」
真顔で言う護。
「……ありがとう」
顔が、熱くなる。
そこに。
「shiori、準備できたか?」
マネージャーが呼びに来た。
「はい」
私が、返事をすると。
「shiori……、それ…」
え、もしかして変?
「綺麗じゃん。絶対にここに居る父兄さんに注目浴びるぞ」
アハハ…。
そんなに雰囲気変わった?
「撮影、始めるそうで…」
ADの子が、呼びに来て言葉を失ってる。
あれ?
「あのー?」
私が声を掛けると、我に返って。
「shioriさん。スタンバイお願いします」
って、照れながら言うから、クスクス笑っちゃった。
「はい」
私が席を立って行こうとすると、目の前に手が差し出された。
エッ…。
顔を上げると護の笑顔があった。
私は、その手を取って。
「ありがとう」
って、笑顔で伝える。
「エスコートするのは、オレの役目だろ」
おどけて言う護。
なんか、恥ずかしい。
俯いていると。
「shioriさんと旦那さんが並ぶと本当の美男美女って感じが出てるな」
スタッフさんの声。
エーっと……。
なんか、恥ずかしすぎるんですが……。
撮影の段取りを聞きに監督の所に向かった。