意外な展開に…
教室では、子供たちが椅子に座って先生の話を聞いていた。
護が、私に気が付いて、手招きする。
私は、他の父兄さんの邪魔にならないように護の傍に向かう。
「二人とも、ちゃんとしてるんだね」
小声で話す。
「二人は、大丈夫だよ。それより、これ見てあげて…」
護が、後ろに貼ってある絵を指す。
そこには、私が描かれていた。
エッ……。
そして、文字も……。
“ママがだいすき”
うわー。
メチャクチャ感激だよ。
撮影の前なのに、涙が……。
「詩織。折角のメイクが、落ちるだろ」
護が、ハンカチで涙を拭ってくれる。
「ありがとう」
私が振り返ると響とかなでが、ニコニコ顔でこっちを見ていた。
かと思ったら。
「ママー」
突然、二人して引っ付いてきた。
私は、屈んで。
「どうしたの?」
二人に聞く。
「今日の衣装、真っ白なんだね。可愛いよ」
ってかなでが言う。
流石に女の子だね。
「二人とも、席に着かないと皆が待ってるよ」
「うん。でも、一言言いたかったの」
「何?」
「「お仕事、頑張ってね」」
って、笑顔で言われた。
「うん。頑張るね」
そう答えて、窓の方を見るとマネージャーの姿が見えた。
「じゃあ、行ってくるね」
「ああ。気を付けろよ」
他の人に迷惑を掛けないように教室を出た。
って言うか、もう掛けてるかもしれないけど…。
「shiori悪いな。優基がなぁ…」
って、言い掛けたマネージャー。
そこに優兄が、現れた。
「これじゃあ、結婚式の衣装じゃんか…」
って、真っ白なタキシードを着ていた。
アハハ……。
確かに、花婿だよ。
「これ着るなら、一番の適任者が、彼処に居るだろうが…」
優兄が、護に目をやる。
エッと……。
「一様断っておきますが、旦那は一般人ですよ」
私が言うと。
「いや。これを俺が着て出るよりも、アイツの方が似合うだろ。それにこの間カミングアウトしたばかりだから、注目浴びるだろうし…」
優兄が言う。
「そうだな。shiori、旦那さんを呼んできてくれるか?」
マネージャーまで…。
もう、どうなっても知らないかね。
「わかりました」
渡は、渋々教室に行き、護を手招きして呼び出す。
護が気付き、自分を指す。
私が頷くと直ぐに来てくれた。
「何だ?」
「実は、私のPVに出てくれないかなぁ?」
駄目元で頼んでみる。
「何で?」
「あれ…」
私が、優兄の姿に目線を送る。
「あぁ、そう言うこと…。わかったよ」
護が、嬉しそうな顔をする。
予想外の反応に。
「いいの?」
思わず聞いてしまった。
「いいよ。詩織の為なら」
「ありがとう」
私は、護の許可が出たことをマネージャーに伝えた。
「本当か?」
マネージャーが確認してきた。
「ええ、妻のためなら…ね」
護が、いつの間にか後ろに居て答えてる。
優しい笑顔付きで。
エヘヘ…。
ちょっと恥ずかしいかも…。
「どうせなら、詩織もウエディング着たら?」
横に居た優兄が言う。
「エッ…。でも、直ぐにはドレスの準備できないよ」
「詩織。自前のウエディング有るだろ?」
私の言葉に護が言う。
「あれを着るの?」
「そうだよ。折角だから、着ればいいじゃん。体型も変わってないんだし…」
最後の方は、小声だったけど。
もう……。
「マネージャーさんに言って、時間貰ってくれるか?オレ、取りに行ってくるから…」
って言ってるそばから、走って行っちゃったよ。
「相変わらず、足早いな」
優兄が、横で呟いた。
アハハ……。
私は、マネージャーにさっきの事を伝えた。
「自前のドレスで撮るか…。それいいかも…。俺から、監督に話を通しておくよ」
そう言って、監督の元に行くマネージャー。
「もう、優兄のせいだからね」
優兄を睨み付ける。
「いいじゃん。これで、公認になるんだし…。それに護は、元有名人だろ」
優兄が、笑っていた。




