二人の笑顔
「…織。詩織」
体を揺さぶられて、目が覚めた。
「あれ…?私、寝てた?」
寝惚けて、聞いてる。
「うん。気持ち良さそうにな」
護がベッドの縁に座ってる。
「二人は?」
「お義母さんと一緒にお風呂に入ってる」
そっか…。
「護」
「ん?」
「ありがとう。大好き」
私は、護に凭れる。
「どうした?」
そんな私を護が優しく抱き締める。
「なんか、幸せ過ぎて怖くなってきた」
私は、思ったことを口にする。
「大丈夫だ。ちゃんと守るから…。オレに言えよ」
「ありがとう。あの子達にも言わないとね」
「二人にはちゃんと伝わってるよ」
護の腕に抱かれながら、落ち着いていく。
「詩織。オレに知られなかったら、おろすつもりだった?」
唐突に聞かれて、素直に頷いた。
「何で?」
護が静かに聞いてくる。
「私。この子達を育てる自信なんて、無いよ。あの子達だって、まともに育てられてないのにそれなのに……」
少し落ち込み気味に言う私に。
「詩織…。不安になってるんだ」
「そうだよ。私は、ずーっと不安なんだよ。今のままでいいのか…。あの子達にちゃんと母親らしいことできてるのかって、ずーっと悩んでる」
「詩織、それでいいんだよ。最初から、きちんと出来る人なんて居ないと思う。悩んで、答えを出せばいいんだよ」
護が、優しく頭を撫でてくる。
「…うん」
「詩織は、詩織らしく居てくれていいんだよ。オレは、それが望みだし、足りないところは、オレが補ってやるから。もう、おろすなんていうなよ」
「……うん」
私は、護の優しさに涙が溢れてくる。
そこに。
「ママー」
部屋の戸を開けて、二人が入ってきた。
「あー。パパがママを泣かしてる」
響が、大きな声で言うから。
「これは、違うの。ママが勝手に涙しただけで……」
私が言うのも聞かず。
「パパ。ママを泣かしちゃダメでしょ!」
かなでまでもが、護を睨みながら言う。
その顔が可愛くて、抱き締める。
「ママ。大丈夫?」
「大丈夫だよ。ありがとうね」
「ママ。くすぐったいよ」
って、耳元でキャッキャ言う。
「あー。かなでばっかりずるい。僕も僕も」
響が、横で騒ぐ。
「響には、パパがしてやる」
護が、響に近付くと。
「やだ!ママがいい」
響が駄々をこねだす。
護は、軽く手をあげた。
私は、かなでを放して響きを抱く。
「ママ。笑ってよ。僕、ママの笑顔が見たい」
響が、飛びきりの笑顔を見せてくれる。
「響」
私は、響の目をみた。
「ママ。大好き」
ニコニコ顔の二人に笑顔を見せた。