頼もしい二人
実家の玄関を開けて。
「ただいま」
私が大きな声で言うと。
「お帰りなさーい!!」
子供たちが元気な声と共に駆け寄ってくる。
「お帰り。大変だったね」
お母さんが、心配そうに言う。
「うん。でも、スッキリしたよ」
「そうなの?」
「うん。今まで言えなくて辛かったことを言えたんだからね」
私が、にこやかに伝えると。
「そっか」
って、お母さんが納得した顔をする。
「ママー。パパは?」
子供たちが聞いてきた。
「パパ?」
私が振り返ると護が、何事かと目を見開いていた。
「パパ! さっきのカッコよかったよ!」
って、子供たちが歓声を上げるから、わからずにいると。
「さっきの会見、テレビで観てたのよ。詩織がよろけた所を護君が間一髪で支えて抱き上げたでしょ。この子達それを目にして護君の事、一層誇らしく思ったみたい」
お母さんが、説明してくれた。
「そんなところまで映されてたの?」
「バッチリ、映っていました」
お母さんが、笑いながら言う。
うわー。
滅茶苦茶、恥ずかしい。
「「パパ、ママ。おめでとう」」
響とかなでが、同時に言う。
私と護は、顔を見合わせた。
「僕たちに弟か妹ができるんだよね」
ニコニコ顔の二人。
「この子達、ママがお仕事でテレビに出るなら観るって聞かなくて、会見の間ずっとテレビから離れなかったからね。新しい命って何って聞いてきたから、教えておいた」
お母さんが、嬉しそうに言う。
「取り敢えず、上がりなさい。それから、二人に話してあげたら」
お母さんに促されて、中に入る。
リビングのソファーに座ると護に目線を送ると、護も頷いた。
私は、自分の口から伝えることにした。
「二人ともおばあちゃんから聞いたと思うけど、ママのお腹の中には、新しい命……。赤ちゃんがいます。でもね、今は小さな卵なんだ。これから、ママのお腹の中でゆっくりと育っていくの。今は、男の子か女の子なのかは、まだわからないけど二人は、この子達のお兄ちゃん、お姉ちゃんになるんだよ」
私は、ゆっくりと二人の目を見ながら伝える。
「ママが大変なときは、二人とも手伝ってくれるかな?」
護が、優しい声で二人に問う。
「うん。かなで、ママのお手伝いする」
「僕も、お手伝い頑張る」
二人は、真顔で返事を返してきた。
「ねぇ、詩織。私の聞き間違いかな?さっき“この子達”と聞こえたのだけど……」
相変わらず、鋭い指摘だね。
「うん。間違いじゃないよ。病院で診察してもらった結果、双子みたいなんだよね」
私の答えに。
「護君、大丈夫なの?」
お母さんが、心配そうに聞いてきた。
「うん。本当は、護に知られる前におろそうって思ってたんだ。私の仕事も安定してないのにこの子達を生んでもいいのかなって……。でも、護が“オレは、会いたい”って言ってくれたの。双子だって言っても、“会いたいよ”って言ってくれたから、生む決心がついたって言うか…」
「そうだったんだね」
「お母さんには、また迷惑かけちゃうけど……」
私が、申し訳なく言うと。
「いいのよ。私は、楽しみが増えて嬉しいわ。響もかなでも優しく育ってるしね。下の子を守るようになってるから、大丈夫だよ。特にかなでは、頼もしく育ってるよ」
お母さんが、穏やかな声で言う。
頼もしくか……。
「ママ」
「何?」
「大好き!」
二人が突然抱きついてきた。
「どうしたの?」
「パパがね。ママが寂しがってるからって……」
響が、私の耳元で言う。
私が護を見ると目を細めて笑ってた。
「ありがとう。ママ、元気出たよ」
「本当?」
かなでが、聞き返してきた。
「本当。あなた達の優しさに感謝してるよ。ありがとう。それからごめんね。父兄参観日、ママお仕事入っちゃった…」
「「エーー。ママが来てくれるって、楽しみにしてたのに……」」
二人同時に落胆する。
双子だけあって、同じ動きをする。
その横で、護が苦笑してる。
「その仕事なんだが、お前達の幼稚園で、今度出すアルバムのプロモーションビデオの撮影だから、ちゃんと観てくれるよ。それにパパも観に行くから、しっかりやるんだぞ」
護が、私の代わりに説明する。
すると。
「「やったーー!!」」
二人が、跳び跳ねて喜ぶ。
こんなに喜んでくれるなんて…。
「その日ね。朝から一緒に居られるからね。それから、優基おじさんも一緒だよ」
って言うと。
「幸姉ちゃんは?」
「遊星くんは?」
二人が聞いてくる。
「二人は、来ないと思うよ。優基おじさんもお仕事で来るんだからね」
「優基と絡みのPVなんて、保存しないといけないわね」
って、お母さんがニコニコしてる。
「あっ、夕食、食べていきなさいね。準備してあるから」
「すみません」
護が恐縮する。
「いいのよ。一人で食べるのって、味気ないしね」
アハハ……。
お父さん、今日も遅いんだ。
「詩織。夕飯の準備手伝って」
「はい」
私がソファーから立っていこうとしたら。
「ママは、座ってて。かなでが手伝うから」
「僕も手伝う」
って、二人がキッチンに入っていく。
私は、どうしたら……。
「座ってれば。昨日もろくに寝てないんだろ」
「だけど…」
「大丈夫。二人ともちゃんとお手伝いできるから、座って休んでな」
私をソファーに座らせて、護もキッチンに行く。
「護君。悪いわね」
「いいえ、このくらいは…」
楽しそうな声。
なんか、私一人が除け者?
護は、私のことを心配してくれてるんだよね。
取り敢えず、部屋に行って着替えてこよう。
私は、
二階の自分の部屋に行く。
ワンピースを脱いで、部屋着に着替える。
これで、ゆっくり出来る。
ベッドに横になると瞼が落ちてくる。
いけない。
私は、眠気と闘ってみるが、疲れてたみたいで、そこで意識が切れた。