子供達の事
「詩織」
「うん?」
「絶対に無理するなよ。お前の事だから、全部内に溜め込む癖があるから、何かあったら、オレに全部話せ」
「仕事の事も?」
「仕事の事もだ。オレには、詩織の仕事まで口にすることはできないが、聞いてやることはできるぞ」
護の優しい言葉に。
「ありがとう……」
素直に言葉と涙が溢れてきた。
「何、泣いてるんだよ」
護が、私の頭に手を置く。
「だって…。子供が出来たと知っておろせって言われるかもって思たら、会いたいって言ってくれるし…。私の我が儘だって、何時も受け入れてくれる護に感謝しきれないんだもん」
「当たり前だろ。って言うか、オレ一人っ子だったからさ、兄弟が居たら楽しいだろうなって、ずっと思ってたんだよ。だから、自分の子供達に寂しい思いさせたくないってだけで、おろせ何て言えない」
護が、優しい眼差しを向けてくる。
「でも、子供達には、寂しい思いさせてるよ。それでも?」
私の言葉に。
「詩織、お前、何もわかってない」
って言葉が返ってきた。
「何が?」
「あいつ等、お前に寂しいって言ったこと一度でもあったか?」
その言葉に首を横に振る。
「そうだろ。あいつ等、お前がテレビに出て歌ってるところを見ると何時も言う言葉があるんだ。“ママが、テレビに出て頑張ってるんだから、僕たちも頑張ろうね、かなで”って、二人で約束してるんだよ。それに“ママに心配させちゃいけないから、寂しいって言葉は口にしないようにしようね”って、子供達なりに気を使ってるんだ」
エッ…。
あの子達、私にそんなこと一言も口に出さない。
「ママには、何時も笑ってて欲しいから、心配かけないようにしようね。それが、今の二人の約束になってるんだよ」
「私……。何も見えてなかった。あの子達の優しさに気付いてなかった」
ごめん。
「仕方ないさ。忙しすぎて、気付いてやれなかっただけなんだ。本当は、二人だって、詩織に甘えたいんだよ。我慢してるように見えないように二人で練習してる」
あっ……。
私、あの子達の何をみてたんだろう。
こんなに大切なのに…。
あの子達に向き合えていなかった。
「私、母親失格だね」
私は、呟くように言う。
「失格なわけないだろう?あいつ等の母親は、お前しか居ないんだ。今からだって、遅くないだろう」
そう、護が言ってくれる。
「お前には、お前にしか出来ないことがある。あいつ等は、お前を誇りに思ってるんだよ。それを壊さない限り、あいつ等は大丈夫だ」
護は、私が欲しい言葉をくれる。
「さて、子供達を迎えに行かないと…」
誠の言葉に涙を拭った。
「そうだね。首を長くして待ってるよね」
「ああ。何時帰ってくるか!待ちわびてるぜ」
何て、話ながら、実家に車を走らせた、護。