検査結果
病院に新たな患者がやってきた。
「おれ、病院なんて行きたくないよ……」
「仕方無いでしょう? 学校の健康診断で引っかかったんだから」
まだ小学4年生になったばかりの少年は、すでに病院の前まできているのに、駄々をこねて、なかなか入ろうとしない。
母親は、困った顔のまま、なんとか説得しようとしている。
「ほら、行きましょう。これが終わったら、我慢したご褒美に何か買ってあげるから」
「ほんと? だったら、行く」
母親に連れられて、少年は病院に入って行く。
この後、病院での検査の結果を知らずに……。
「朝倉さん。すいませんが、お母さんの方だけ、お越し下さい」
一通りの検査が終わった後、看護師が呼んだのは、少年の母親だけだった。
母親の顔色は、一瞬で青くなった。
そろりと、幽霊のように、医師の元に向かう。
「あの、洋介の体に、何か……あったんでしょうか?」
「大変言いにくいんですが……」
白衣がしっくりときているという以外に特徴のない医師が、真摯な瞳を向けながら、言葉を紡ぐ。
「息子さんは、病気です。 それも、今の医学ではどうしようもないほど、重いものです」
「そんな……」
長い沈黙の後、母親は、そう溢した。
「出来るならば、早いうちに入院した方がいいでしょう。うちの病院でよろしければ、明日までにベッドを作っておけますが……」
その後、続いた医師の言葉のほとんどは、母親の耳には届かなかった。




