第2章 第1幕 背後霊さん、こんにちは
「いる、後ろ」
たぶん昨日放送していたテレビの影響なんだろう。背後霊を見て欲しいと髪金に頼まれた。
私はそういうものが見えたから、いいよと返事はしてみたものの、いざ見てみると見なければ良かったと少し後悔した。なぜなら髪金の背後霊が……微妙だったから。
髪金の背後霊は、私が見えているのをわかっているのか、ちょっとした手品を見せて、得意満面の笑みでどう? と視線を送ってきた。
そのタネはとても単純で、びっくりできるものじゃなかったけど、得意満面の彼をイヤとは思えなかった。
「ちっくしょう! 見えないけど、背後霊さん、こんちはっす!」
髪金は、背後霊を見ようと必死に背中を見ている。
「トロ子、俺は背後霊を見れないのか?」
「……一度だけ見れる……かも」
「いつ!?」
「死ぬ時に背後霊は髪金より前に出る。その時、見れる」
「ってことは背後霊を見たら死ぬってことか!? やっべぇ、そういうこと最初に言えよ。危なく見るところだったぜぇ」
本人には言えないけど、髪金はアホのジャンルに分類されると思う。リーダー、クール、そして髪金。
髪金は他の二人と一線を引いてるみたいだけど、みんなの中では同属扱いである。
「しかしイヤなこと聞いたな。いつも後ろにいるのに見たら死ぬのか。クソ、毎日がスリリングだぜ」
背中を意識しすぎの髪金は、首が固定したロボットのような動きで立ち上がった。
「大丈夫、まだ死なない」
「ほんとか!?」
「ね、はげ」
「はげ?」
「髪金、はげ背後霊」
「マジで!? いけてねぇ!」
髪金の嘆いた顔は素直に面白いと思えた。