最終章 最終幕 あいつらしく
爆発の煙が薄くなった先に、あの頃と変わらないあいつがいた。
僕は随分大きくなってしまったけど、あいつはあの頃のまま。あいつは、ぽーんと何かを蹴ってきた。
サッカーボールだった。
僕はリフティングしようとしたけど、上に大きく弾かれただけだった。
そのボールをどこかへ飛ばさないように、両手でしっかり受け止め、振り返り言った。
「言っただろ、リフティング苦手なんだって」
あいつはかぶりを振った。そうだな、がんばればできるんだよな。
僕は申し訳なく、そして照れくさく言った。
「悪い、お前のこと忘れてた」
あいつは笑った。そして僕の持つサッカーボールを指差した。
あいつがくれたサッカーボールを見ると、いつの間にか彼女の箱になっていた。
少しの可能性でも戦うお前はすごいよ。僕はあいつと親友でいれたことを、心の底から誇らしく思った。
そんなあいつに少しでも近づけるように、僕は箱のテープを剥がした。
「今……解放してあげる」
そっと箱を開けた瞬間、一筋の光が空に向かって上がった。
びゅっと吹いた風が、ビッグボールの中からたくさんの箱を宙にあげた。日に照らされた箱達は、きらきらとまるで結晶のように街に降り注いだ。
「……これでよかったんだろ?」
あいつはあの裏山の時と同じ、笑顔を浮かべた。
僕もあの時みたいに笑顔を浮かべ、空を眺めた。朦朧とする意識の中、いつの間にか広がっていた青空にすがすがしさを感じていた。
*
「……思い出しちゃったじゃない! 忘れたかったのに! 思い出したくなかったのに! ……なんで、なんで、いなくなったのよ……。ずっとつらかったんだから……。苦しかったんだから!」
涙が止まらなかった。
マオーと、彼は申し訳なさそうに鳴いた。
「マオーじゃわかんないのよ! ……いいわよ、しょってあげる。あなたのこと、しょってあげる! その変わり、ちゃんと私を守ってよ!」
彼は笑顔を浮かべ、最後にマオと呼んで、消えた。