第2章 序 髪金と私
いつからか不思議な夢を見るようになっていた。
それは普通の夢ではなくて、現実となる夢。
正夢というのかもしれない。
その不思議な夢を見ることを、みんなに教えたくて、はしゃぎまわった。
みんながすごいと言ってくれた。それがとてもうれしかった。
今日はどんな夢が見れるだろうと、毎日ドキドキしながら眠りについた。
ただ、みんなで飼っていたウサギがいなくなることを夢見て、それが現実になった時、みんなの想いが変わった。
「気持ち悪いんだよ」
「またあいつの言ったことが当たった」
いつしかその夢は、他の人には気味が悪いものでしかなくなっていた。
私は自分の気持ちを閉じ込め、そして夢を口にすることをやめた。
夢は私を苦しめるものでしかなく、心の奥に隠し続けた。
私がこうやっていれば、誰も嫌がることはない。
私がこうやっていれば、私も傷つくことはない。
「おい、トロ子って未来が見えるんだって?」
そんな私に話し掛けてきたのが、髪金だった。
「実はさ、見てもらいたいことがあるんだけどよ」
目を輝かせている髪金には、私を恐れている様子はなかった。
「……怖くないの? 私は過去も未来も、なんでも見えてしまう」
「すげーよな! いったいどういう風に見えるんだ?」
「……すごい?」
あの日以来、もう言ってもらえないと思っていた言葉だった。
「俺が見てもらいたいのは……ここだけの話だぞ。実はさ、俺、正義のヒーローになりたくてよ。子供の頃、命を助けてもらったことがあってさ。だから今度は俺が助けたいんだ!」
そう強い口調で話す髪金は、自分が将来ヒーローになっているかどうかを見てもらいたいと言った。
表情がせわしなく変わる髪金を見て、ずっと閉じ込めていた気持ちが和らいでいくのが分かった。
その日、私は髪金の未来を見れるように、久々にドキドキした気持ちで眠りについた。