最終章 第6幕 開かれる想い
ロボはポンコツ気味とは思えないスピードでビッグボールに近づいていた。
「……なぁ、ロボ」
「なんです?」
「お前、ほんとに覚えてないのか? 三体目だからとか言ってたよな。ほんとに前のこと、覚えてないのか?」
ロボは少し黙った後、口を開いた。
「覚えてますよ。私は偉大なるミスターのスパイだったんですよね? 忘れられるわけないじゃないですか」
「……だよな」
「私は、私が出来た当時、何もわかりませんでした。私はロボットですから、様々な事を経験するうちにどんどんデータが加えられ、成長していったんです。だからそのデータを消すことは、私を消すことと同じなんです」
堂々と話すロボは、ロボットとは思えなかった。そうやって成長してきた人と思えた。
僕らはビッグボールのすぐ上にまで来ていた。ホゲーンとひと悶着している分、簡単に近づくことが出来た。
「ありがとう、ここまで来れば大丈夫だ」
「でも、どうやって開けるんです? ホゲーンだって、開けることが出来ないフタを」
「実は……考えてなかったんだよね」
ロボがあきれた顔をした。
「とにかく、解放しなきゃと思ったらさ、体が動いてたんだ」
「……それでも何とかしないとと思っただっしゅさんは素晴らしいです。そのがんばれる力……その体を押してまでがんばれる力」
「……気付いてたのか?」
「さっきから、だっしゅさんの血でショート寸前なんです」
さっきから朦朧としていた。気力だけが僕を支えていた。どうやって蓋を開け、中から想いを取り出せばいいのか。朦朧とする頭では考えられなかった。
意識が飛びかけた時、突然ロボが急降下して僕を振り落とした。
その衝撃でなお意識が飛びそうになった。うっすらと見える視界にロボが立っている。
「よく偉大なヒーローって自分を犠牲にしてみんなを守るじゃないですか」
そういって、ロボは何かのスイッチを手に持った。
「フタを開けるだけの威力があるはずです。役に立てそうですね?」
ロボはカクンと一度足を折った。
「私の破片を見つけたら、何かのパーツとして使ってください。偉大なロボットじゃなくてもいいですよ」
ロボ! と手を伸ばした瞬間、爆発による突風が僕をすり抜けていった。そしてそれと共に忘れていた想い出、あいつとの想い出が流れ込んできた。