最終章 第2幕 想いの交錯
「サンシャインを食べ終えました。依然ビッグボールは街を食べ続けています」
「くそ、なにも出来ないなんて!」
髪金が苦々しく言う。
本来守るべきであったビッグボールが、今は世界の敵になっている。
「いったい何が目的なんだ?」
最強が疑問を投げかけた。それに対して意外なる人物、クールが大真面目に答えた。
「……おそらく、自分たちの想い出を食べているんだろう」
「どうした、急にまじめぶった顔して」
クールは、髪金の言葉に耳を貸さず続けた。
「自分達を苦しめるもの、脅かすもの、そういうものを食べることで閉じ込めている。つらい想い、忘れたい想い、ひとはどうしてもそういうものがある。そういう想い出を閉じ込める箱 だからこそ、それを望む人の想いでビッグボールはあの姿になったのかもしれない」
全員が、クールの頭がとうとうおかしくなったと思った。ただリーダーとキャバクラは表情を変えなかった。
「お前がそう言うなら、そうなのかもしれないな」
リーダーの言葉に髪金は首を傾げた。
「しかし、あんな風なロボットになるのは聞いてないぞ?」
二人の会話についていけない中、街はどんどん壊されていた。
「池袋消失か、新宿、池袋、次は……」
「想い出いっぱいの巣鴨あたりか?」
「おい、リーダー、クール、さっきから何を話してるんだ?」
「話は複雑だ。あれを作ったのが、こいつと私だと思っていればいい」
「ならなんとかしろよ!」
「さっきも言ったとおり、箱までは私達が作ったが、ロボットまでは作っていない」
「なら誰が!?」
「ミスターじゃないかしら?」
キャバクラが言った。
「ロボットを開発できる技術者なんて数が知れているわ。ならミスターの可能性が高いでしょ? もしくは……博士だったりして」
「僕はそんなことをしない!」
「どうかしら? 大好きだったんでしょ、お父さんのこと。世界制服を企むお父さんに協力しても、おかしくないわよね。ここにいるのも、ロボみたいにスパイ活動なんじゃないの?」
全員が博士を見る。
博士の顔から血の気が引いていくのが分かる。
「そんなことしない! 信じてよ!」
博士の声がむなしく部屋に響く。
「みんなも博士だと思ってるみたいよ?」
「博士が作ったなんてこれっぽっちも思ってないよ」
キャバクラの言葉を髪金が否定した。キャバクラは両手を広げて皮肉に笑う。クールがキャバクラを睨み言った。
「むしろ僕は君を疑うね。君はビッグボールにこだわり続けた。そして君が影でこそこそと動いていたことも知っている。あれが動いた時、目覚めろとか言っていたな。何を知っている?」
「……博士は平気で、私は疑われるんだ。……残念だけど、私は何も知らないし、ましてあれを作ることなんで出来ない」
キャバクラは言い切った。しかし誰もがキャバクラは、しらをきっていると感じていた。