第5章 第7幕 そして現れる最強のモノ
ほんの一瞬、街全体を影が襲った。まるで空間が瞬きしたような。
モニターではホゲーンの動きが止まっていた。いや止められていた。
ホゲーンの顔をつかむ腕が、ビッグボールから伸びていた。黒く、長く伸びていた。
ビーッグ
言い終えた後も遠くまで響き渡る低い声が、部屋まで届いた。
モニターに映るビッグボールは異形のモノと化していた。黒くなったビッグボールの壁面には真っ赤な目がくっきりと浮かび、その目はホゲーンを睨みつけ、威圧していた。そして横に真っ二つに割れ、その割れ目は口となった。まるで笑っているようだった。
「……変形した?」
髪金が呟いた。全員が言葉を無くしていた。
「……偉大なるスーパーロボット?」
「あの姿が偉大に見えるか!?」
リーダーとロボの会話がその異様さを物語る。
ビッグボールは、舌をなめずると、漆黒の翼を大きく広げた。そしてホゲーンを掴むと、宙へと飛び上がった。
「……あれはロボットじゃない」
博士は震えていた。
ビーッグと言う声と共に、ホゲーンをぶん投げるビッグボール。砂埃を巻き上げ、山に激突するホゲーン。その振動が部屋まで届く。
立ちのぼる砂埃の隙間から、ホゲーンの波動砲が放たれたが、ビッグボールはそれを交わすと、一気にホゲーンに近づいた。
ホゲーンは口を開き、次の波動砲を放とうとする。しかしそれ以上の大きな口を開け、ビッグボールはホゲーンをゴクリと飲み込んだ。
「……飲んだ、ホゲーンを飲み込みやがった」
一回り大きくなったように見えるビッグボールは、ビーッグと声をあげた。
目覚めたんだ、やっと目覚めたんだ!
ボルレンジャーがその姿に恐怖する中、キャバクラは喜びのあまり涙をこぼしていた。
これで想いは守られるんだ!
そう思いながらもキャバクラは、――胸が苦しい――そう感じていた。