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第1章 最終幕 闘い 終えて

「なぜ撃った、あほう!」

 リーダーの怒り圧で、ビリビリと窓が揺れた。

 アホか、その言葉に俺は腕を組んでこっちを見ているクールを見た。

「お前だ、髪金!」

「俺?」

「お前以外に誰がいるというのだ!」

 クールを見たが、みんなの視線は俺に向けられている。クールはアホだが、どうやら今回のアホは俺のようだ。

「……まさかあんた程のアホにアホと言われるとはね」

 するとリーダーもクールを見た。

「あんただ!」

「何度も言っているが、あんな大技は駄目だ!」

「ど派手でかっこいいからいいだろ!」

「かっこいい!? そりゃ私はかっこいいわ! 私が言っているのは、あの技を使ったことだ!」

「俺が言っているのもあの技のことだ!」

「かっこよくしてどうする! 貴様、モテる気か!」

「ああ、モテたいさ!」

 リーダーの懐から取り出された銃がクールをとらえる。そしてパンと乾いた音が部屋に響いた。

「切れちゃったよぉ。恋愛ご法度と知っての発言か!」

「なんで僕が……」

 崩れ落ちるクールに誰も見向きもしない。クールはそんな扱いの男だ。

「リーダーがどんなひどい失恋をしたか知らないが、その腹いせを俺たちに向けないで欲しい!」

 

 ――くそっ、なんでヒーローになってこんな口論してるんだ、俺は。


「もてるもてないはどうでもいいけど、私もボールダンのパワーアップに賛成だわ」

 珍しくキャバクラと意見があった。

「ホゲーンには新たに波動機能がつけられていた。地球征服なんてくだらない野望は持ってはいるけど、ミスターは侮れないわ」

「こっちだって負けてはいない! 博士、新しい武器を説明してやれ!」

「いや、作ってないし」

「新しい武器を作る資金なんてどこにもないわよ。破壊した街の補償はどうするの?」

 キャンディが、束になった請求書を机にたたきつけた。ずいぶんと溜まったもんだ……。

「それは、知らんぷりん」

「ぷりんじゃ通用しません」

「なんで私たちが秘密組織かわかる? 支払いから逃げてるからだよ! いないよ、民家に勝手に基地作って隠れてる公務員なんて、今時」

 昔からいねーよ。

「でもみんなが言うようにこのままだといつか負けるぜ?」

 という最強のかわいい声の意見に、

「そんな時は逃げればいい。その時のための僕だ」

 と、MS−08 逃げる専用だっしゅが返した。だっしゅはいいヤツだが、どうも逃げ腰なのが気に食わない。それに時々ぼーっとしていて、何を考えてるかよくわからないところがある。


「……ごめん、僕の親父のせいで」


 博士の非常に申し訳なさそうな声が俺らを包んだ。博士を見ると目にうっすら涙をためてうつむいていた。

 そう、俺らの敵「ホゲーン」は、博士の父親である「ミスター」が作ったものだった。

 そんな父親の暴走の責任を取ってここにいるんだろうが、まだ子供なのに不憫なやつだと思う。

「あやまらないの、博士が悪いわけじゃないんだからさ」

「甘いわね、キャンディーは。家族なのよ? 謝って当然じゃないの? ねぇ、居場所くらい知ってるんじゃないの?」

 キャバクラは博士に顔をぐっと近づけて、ニヤリとした。

 どうもこの女は好きじゃない。いつも不気味に笑っているし、人をどん底に落とすことを楽しんでいるようだ。

「……知らない。……ただ、あのバカ親父の責任はちゃんととるよ!」

 そう言うと、博士は部屋に積み上げられたダンボールに戻っていった。

「なんであんたはいつも!」

「だってそうでしょ? 私、間違ってるかしら?」

 キャバクラの意見も一理あるが……。


 部屋に充満するイヤな空気を変えてくれるようにリーダーに視線を送ったが、そういうことに鈍感なのかダンボールに戻ろうとしていた。


 全くもっていい所のないリーダーに、正直俺は失望していた。

 俺を助けてくれた時のリーダーの面影は全くなかった。


 そんな空気をだっしゅがさらに悪化させた。

「もう少し、やさしくした方がいい」

 その言葉に、キャバクラはだっしゅを睨みつけた。

「……やさしく? ……あんたに言われたくないわよ!」

 二人の関係は以前から嫌悪だった。会話からして二人には何かあったらしいんだが、それが何なのかわからなかった。前に理由を聞いたが、当人達ですら分かっていないようだった。生理的なものなのかもしれない。

「……まぁ、いいわ。クール、ちょっといい?」

 そう言うとキャバクラとクールは奥の部屋に入っていった。

「あの二人、ひょっとして!?」

 メルヘン女キャンディが目をときめかせている。

 その時、みんなが部屋中に包まれる恐怖のオーラに気付いた。

 振り返ると、恋愛ご法度の猛者リーダーの怒りが爆発寸前にまで達していた。

「変身する、リーダーが変身するぞ!」

 変身したリーダーは、言葉では表せない恐怖の権化と化すのであった。

 が、そんなリーダーを止めたのは、またもだっしゅの一言だった。

「……それはないと思うよ。あいつには想っている人がいるから。」

「……想っている人?」

 キャンディが聞き返したが、だっしゅはいつもの如くぼーっとしていた。

「……どうした、だっしゅ?」

「……へ? 何が?」

「いや、あの2人は付き合ってないって」

「え? 僕が言ったの? ……なんでだろ?」

 ……相変わらず掴み所のない男だ。



  *



 それから数時間後……。


「いや、いや、ホゲーンも強力になっているようですね、ずいぶん飛ばされてしまいました。最長記録です。はい、おみやげの本マグロ」

 空の彼方に飛んでいったロボが本マグロを片手に玄関から入ってきたが、もう部屋には誰もいなかった。ただ遠くで蝉の鳴き声だけが聞こえていた。

「……誰もいないようですね」

 ロボはおもむろに胸からケーブルらしきものを引っ張り出す。

「……ネットワークケーブル接続。データ受信、データ受信、はい、偉大なるミスター。命令どおり果たし状を渡します。目立つようにコーティングしておきました。これでとうとう偉大なるスーパーロボットが復活するのですね! そして私も偉大なるスーパーロボットのパーツとして!」

 ロボはピンク色にコーティングされた果たし状を壁に貼り付けた。


 これから始まる激動の前の静けさなのか、誰もいない部屋でロボの笑い声だけが響いていた。

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