第5章 第6幕 現る、ホゲーン!
「まぁ、いいわ」
キャバクラは崩れ落ちているキャンディを見て、最初の計画は潰れたと理解した。
「出来るだけ箱を集めたかったけど、仕方ないわね。それに箱ならまだ集められそうだから。ね、キャンディ」
キャバクラは優しくキャンディに声をかけた。
「あなたの好きな人は去っていったわ。もうどうしようもないわね。でもね、ひとつだけいい方法があるの。そう、あなたが忘れればいいだけなのよ。そうしたら苦しまない。さあ、その 想いをこの箱に詰めましょう? 誰にも開かれる事なく、傷つくことない頑丈な箱の中へ!」
キャンディに伸ばした手が肩に触れる瞬間、マオー! という、キャバクラにとって最も耳障りな声が聞こえた。
部屋の警報が鳴り響き、いつもの如くボルレンジャーが集まる。ただいつもと違う点は、出撃するボールダンがまだ修理されていなかったことだ。
――そろそろ、目覚めるはず、そうでしょ!?
キャバクラはそう思いながらも、ボールダンがない今、焦りを感じずにはいられなかった、
トロ子の説明が、事態が緊迫であることを告げる。
「ホゲーン、ビッグボール脇に出現。大きさが3倍になっています」
「ただ……見てるしかないのか?」
髪金が悔しそうに拳を叩きつける。
「……目覚めなさい、最強のロボット」
キャバクラがモニターを見ながら呟く。ロボが「最強のロボット?」と話し掛けたが、キャバクラの耳には届いていなかった。
ホゲーンの口が開き、マオー! という声と共に波動砲をビッグボールに放つ。波動砲が当たったビッグボールはサイコロのように転がった。ビッグボールの表面は真っ黒になっていた。
なおもホゲーンはビッグボールを持ち上げ、上下に振る。
「……はやく目覚めて、そいつを倒しなさいよ!」
マオー、マオーとホゲーンの鳴き声が響く。
「その名を呼ぶなって言ってるでしょ!」
キャバクラは膝をついてぶつぶつとささやき出した。
頭が痛い、やつの声が響く、やめろ、やめろ、やめろ!
キャバクラの異常さにみんなが駆け寄る。しかしキャバクラはただ言葉を繰り返すだけだった。
「その名前を呼ぶな、その名前を呼ぶな、その名前を呼ぶな」
髪金がキャバクラの肩に手をかけるが、それを振りほどいてキャバクラはモニターにしがみついた。
ホゲーンは口を開き、レーザーを放とうとしていた。
「目覚めなさいよ!」