表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/61

第5章 第5幕 崩れる均衡

 こんなにも効果があるならだっしゅにも……。


「ねぇ、忘れよ? 彼女の事なんて忘れてさ、一緒にいようよ」

 積んであるダンボールから、ひとつの箱を取りだした。

「……それって彼女の持っていた箱」

「忘れてよ、だっしゅ。そしたらさぁ、楽になるから!」

 私は気持ちを抑えられないでいた。

「……忘れる? なにを言ってるんだよ?」

 そう私に聞いてきたあと、表情を変えてまた見えない誰かに声を上げた。

「言いたいことがあるならちゃんと言えよ! 黙ってたらわからないだろ! この箱? この箱が何だって言うんだ?」

 私の箱をさっと奪った。

「うるさい! 僕はこの場所から離れるんだ! もうここにいるのがイヤなんだよ!」

 そして手にした箱を、話している方へ投げ捨てた。

「そんなに欲しけりゃくれてやるよ! 僕の好きにさせてくれよ!」

 ドアを開け、去ろうとするだっしゅの手を、私は掴んでいた。この手を離したらだっしゅはいなくなってしまう。

「待ってよ! なんで!? なんで、忘れないの!? ふられたんだよ! 苦しいだけなんだよ!」

 もう気持ちを抑えることは出来ない。

「だっしゅのことが好きなのよ! ……だから……だから行かないでよ」

 どうにもならないことは分かっていた。涙が溢れ、体が震えた。

「……ごめん」

 だっしゅはそれだけ言って、私の手をそっと離し出て行った。力が抜け、震える体を両手で押さえる。


「情けないわね」


 いつのまにか部屋にいたキャバクラの声が、私に向けられた。でも何も言い返すことは出来なかった。そんな気持ちでもない。もう何も考えられなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介登場人物
HONなび
Wandering Network
ネット小説ランキング
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
こちらもNEWVEL
こちらもカテゴリ別
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ