第4章 最終幕 そして動くもうひとつの想い
「…最悪だ」
だっしゅはげっそりとした顔でキャンディに呟いた。
昨日だっしゅは、ロボが停止して落ち着いた頃、息を切らして戻ってきた。リーダーにすごく怒られていたけど、リーダーの言葉を遮って「急いで戻らないと」と言って、また部屋を出て行った。当然戻ってきた時には、さらにリーダーに怒られていた。
危険時に出動しなかったキャバクラも怒られていたけど、「謹慎中と言ったのはリーダーでしょ」との一言で話は終わった。
キャバクラは去り際、「今日は表情が明るいわね」と声をかけてきた。たしかに私は落ち着いていた。
「大丈夫よ、どうせ待ったって来なかったわよ」
だってあれはラブレターじゃないんだから――その事実を私からは言わないでいた。
だっしゅの大きなため息のあと、カチャと部屋の扉が開いた。
そこにはうつむいた彼女がいた。彼女の目は赤く充血していた。
「……ふられちゃった」
精一杯無理してつくった笑顔の彼女に、だっしゅは反論した。
「違うんだよ! ちゃんと待ち合わせ場所にいたんだけど、急用が出来てさ! どうしてもはずせなくて……ごめん!」
「そりゃそうだよね、私のことなんて」
「そんなことない、僕は、僕は君のことが……」
「嫌いだって言われた。私のこと、嫌いだって言われた」
だっしゅはその言葉にきょとんとしていた。
「……言ってないよ、そんなこと。なに言ってるの?」
「ふられちゃった」
彼女は涙をポトポトと落としながら、その場に座り込んだ。
「あ、あのさ、お詫びといってはなんだけど、今度、今度さ……。……ねえ、泣かないでよ、ねぇ、泣かないでよ。……泣かないでよ」
彼女を心配そうに見るだっしゅの手には、遊園地のチケットが握り締められていた。
だっしゅと彼女はこの日、失恋した。
※
――ソノオモイ、トジコメマショ