第4章 第8幕 歯車が戻りだす
「随分と余裕ですね。ですが私も聞いていたんです。あなたたちは私をトランプに交ぜてくれなかったから知らないでしょうが、ずっとダンボール裏で見ていたんですよ!」
ロボの手からバサッと傘が開く。ロボの体はその傘に完全に隠れた。
「私も交ぜて欲しかった!」
その悔しさは相当だったのか、地団駄を踏んでいる。
「さあ、コクピットを用意して、逃げてください。あなたたちを殺す気はありません。仲間外れにされても殺す気はありません! コクピットの破壊が目的です!」
ロボは指についた爆弾のスイッチを、いつでも押せますと言うように見せつけた。
「断る」
きっぱりとリーダーは言う。死にたいんですかというロボの問いにも耳を傾けない。
「この建物ごと壊すことは簡単なんですよ!」
「みんな、絆創膏を用意しておけ」
「……どうしてもコクピットをださないつもりですか?」
リーダーは大きく頷いた。
「……仕方ありません。自分で開けさせてもらいます」
そう言うと、ロボの目が光った。トロ子はそれが何であるかを知っていた。気をつけてというトロ子の言葉より先に、ロボの声が響く。
「アイビーム!」
その目の先はトロ子に向けられていた。
ドンと髪金に押され、トロ子は床に倒れた。顔をあげて目に入ったのは、右手から血を流している髪金だった。
トロ子は感じていた。
現実が夢に近づいている。少しくらいの方向転換なら現実は元に戻っていく。今、現実が夢に傾いている。
「俺は正義のヒーローになってみんなを救うって夢があるって言ったよな? だから誰も死なせない!」
このままだと!
脳裏に夢の光景がよぎるのと同時に、体が動いていた。
髪金は、髪金だけは死なせない!
勢いよくロボに迫る。ロボの目が光る。髪金の呼ぶ声がする。今度は私の手を握る手はなかった。
迫り来るビームに目を瞑る。じりじりと髪が焼ける音。
ただそのビームは私の顔の横を通り抜けただけだった。
アイビームに当たり、その血をロボにかけるつもりだったトロ子の体は、そのままロボにぶつかる形で捕われた。
「さあ、トロ子さんを救いたければ、コクピットを出しなさい!」