第4章 第6幕 ボールダンを止めろ!!
「ロボに惹かれてるんだ!」
博士がドライバーを持ってロボを押さえようとする。ロボは危険を察したのか俊敏に逃げる。
「やですよ、せっかくもてたのに!」
「いつもより三倍ははやく動いている感じがするぞ!」
「恋愛ご法度と知ってての発言か!」
「モテない男の遠吠えですね」
言ってはいけないことを言ったロボを、リーダーから放たれた弾丸が貫いた。ボンという音と共に崩れるロボ。
その光景を目の当たりにしたボールダンは、ボールという切なげな声をあげ、そしてアパートを激しく揺らしだした。
「きっとロボを失ったことにより悲しんでるんだ!」
「どうするのよ!?」
キャンディーさんが叫ぶと同時に、みんなが宙に浮き上がった。そして床に叩きつけられる。モニターを見ると、ボールダンがアパートを根こそぎ引っこ抜いていた。
さらにアパートを激しく揺さ振るボールダン。悲しみの表現にしては度が過ぎている。
みんなダンボールを掴んでその揺れに耐えている。ただ横たわっていたロボは、床と天井を右往左往していて、そして部屋の照明にあたり、激しい火花のあと、ドカッと床に落ちた。
窓の外では両手を振り上げたボールダン。
部屋は絶叫で包まれた。
ただ、ボールダンの両手は振り下ろされることはなかった。ボールダンは両手を挙げたまま佇んでいた。部屋の電子音も納まり、時計の時間を刻む音だけがカチカチと聞こえる。
さっきの電球との衝突で、ロボの「モテる」が壊れたってこと? 原因はわからないけど、危機は過ぎ去ったみたいだ。
安堵の表情を浮かべ顔を上げると、目に入る光景に見覚えがあった。そう忘れもしない光景。
慌ててロボを見る。黒い煙を上げながらロボが立っている。
「動かないでください!」
ロボが声をあげる。
――夢が動き始めた。