第4章 第5幕 モテルカ、ロボ!?
――?
特に何かが変わった様子はなかった――ロボに惹かれる自分もいやだけど。
「どうです、モテてます?」
ロボが流し目で聞いてくる。その目になんら魅力を見出せず、その気持ちは博士も最強さんも同じだったみたいだ。
「僕はロボに対してなんとも思わないね」
「俺もなんとも思わん」
「だめじゃないですか! トロ子さんは!?」
必死な形相が髪金と重なる。
「ロボットだし、もてるとかそういうのはやっぱり……」
「うんちくは聞きたくありません! うんちく、うんちく、うんち食う? うんち食う!」
「博士、またおかしくなった!」
「もてないという現実を知った軽いショック状態でしょ」
ただ、この時は気付いていなかったけど、ロボは確かにモテ始めていた。
おかしくなったロボの声に、「今ならなんと半額」という通信販売のコマーシャルの声が重なる。誰が見ているんだろうと、テレビの方に振り向くと、リモコンは机に置かれたままで、そこには誰もいなかった。次に電子レンジが何かを温めたのか、チンと鳴った。今度もキッチンに誰もいない。誰もいないのに、電子レンジはまた何かを暖め始める。
電化製品の様子がおかしいことにみんなが気付き始めた。
部屋の照明がチカチカと点滅し、プルルと途切れ途切れに電話が鳴る。耳を塞ぎたくなるほどの電子音が部屋に鳴り続ける。
「なんだよ、これ」
最強さんの言葉のあと、遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。そう聞こえるはずのない声。
ボール♪
警報が鳴り響く。最も危険な事態、ボールダンに異常事態が生じた際の警報だ。その警報に合わせてみんなが現れる。
私も慌ててボールダンの状況を調べた。ボールダンの現在位置が、このアパートに向かって物凄い勢いで近づいている。
「誰も操縦してないではないか!」
「その前に誰が合体させたかよ」
モニターに写されたボールダンは、なぜかモジモジしながら、そしてなぜか頬を赤らめながら近づいていた。
「様子……おかしくないか?」
「恋だ、きっと恋だわ!」
「でた、メルヘン野郎」
「何よ、その言い方!」
「ロボットが恋なんてするわけないだろ!」
「あ」
博士と最強さんが声を合わせていった。
「……ロボだ、ロボに惹かれているんだ」
「どういうことだ?」
「実は……」
突然、モニターのボールダンが大きくジャンプした。一瞬の間のあと、部屋に訪れる縦揺れの衝撃。窓の外には頬を赤らめたボールダン。
窓を見るロボ。何故か流し目。ボールダンの頬がさらに一気に赤くなる。ボール♪ ボール♪ と甘い声を囁きながら、アパートを揺らし始めた。