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第4章 第2幕 アメリカーナ・だっしゅさん

 だっしゅさんは言葉では表せない、というより適した言葉が見つからない奇抜な姿をしていた。

 上着は白地のフリフリ、毛皮のマフラー、そしてアメリカ国旗のようなパンツ。胸を少しだけ反って、肩をなびかせながら歩いている。一体何が起こったのか見当もつかなかった。ロボも同じ気持ちだったみたいで、「なんです、その姿」と、目を点にしていた。

 二人の疑問に対してだっしゅさんは、例のラブレターを取り出し、幸せそうに驚きの回答をした。

「デートなんでね♪」

「………」

 短かったけど、確かに認識できる沈黙の間が生まれた。どう転んでもデートにその姿は……。

「……てっきりコンサートかと思いました」

「コンサートって、僕、歌手じゃないし」

「歌手でもないのによくそんな服持ってましたね」

「……派手すぎたかな? 成人式のやつなんだけどさ」

 成人式!? 大人になることへのお祝い、スーツや着物姿の人、その中でアメリカンなだっしゅさん。その姿、その場の雰囲気を想像した。……きまり悪かっただろうな、周りの人達。

 だっしゅさんって唯一まともな人だと思っていたのに。

「待ち合わせぎりぎりなんだよ、みんなには内緒にしておいて! 特にリーダーには」

「はい……会えるといいですね」

「会えるよ、待ち合わせなんだから。ああ、髪が乱れてしまったんじゃないかな?」

 そう言って洗面所へのドアを開けると、そこにはいつものアフロヘアではなく、きれいにてっぺんが刈り取られているリーダーが、育毛剤を片手に鏡と向き合っていた。いつものアフロはというと洗面台にのっていた。禁断の光景だった。だから私はその記憶をとっさに封じ込めた。

 だっしゅさんは慌ててドアを閉め、玄関に急いだ。

「あぶなく見つかるところだった。じゃあ、ロボ」

「はい、サヨウナラ」

 だっしゅさんは逃げるように部屋を出ていった。デート先にたどり着くまでに捕まらなければいいけど。職務質問くらいはあるかな……いろんな意味でがんばってください。

 いつも緊張感が欠けているみんなの中といると、これから起こることなんて、本当は起こらないんじゃないかと思ってしまうくらい平和な時間に包まれる。居心地が良いというか、なんというか。

 でもそんな平和な時間を、ロボの言葉が切り裂いた。

「サヨナラ、だっしゅさん。待ち合わせ場所には誰も来ませんよ。それはラブレターではなく、果たし状ですから。それにその作戦は中止になりました。ただ、運がいい。爆発であまり人を傷つけたくないですからね」

 そう言ってロボは非常ベルに近づいた。私は慌ててロボに近づくためダンボールから出ようとした。

 けれど今度は最強さんが部屋に入ってきたので、またまたダンボールに引き返さざるをえなかった。

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