第3章 4幕 ニワトリ星人になれるのか!?
あの日以来、私たちはニワトリ星人として彼女と接している。
それでまかり通ってしまうのもいかがなものかとは思うけど、警察に通報されるよりはましだと思うしかない。
なによりニワトリ星人に大興奮な彼女は、目をキラキラさせ、私達と親しくなろうとしている。今は昼ごはんを一緒に食べようと誘われ、彼女の買い出しを待っている。唐揚げは共食いよねと言葉を残し走り出た彼女こそが、私には宇宙人に思えた。
「ニワトリ星人なんてウソついてどうするのよ」
「ニワトリ星人で通すしかないでしょ? 僕はニワトリ星人だ、僕はニワトリ星人だ……」
「暗示かけたって無駄よ!」
「コケー! 我々はM28星雲からやってきたのだ」
「なるほど、ニワトリなだけにM28って、あほぉ! とにかく、宇宙へ帰るでもなんでもいいから、あのコの前からいなくならないと!」
「でも、UFOが壊れてしまったし」
「そっちの世界に入り込まない! 私たちは彼女と接していてはいけないのよ?」
「秘密組織だから? ……残念だけど、僕はもうニワトリ星人だから」
だっしゅはいつのまにかニワトリ星人化していた。恋のパワーは恐ろしいというか、だっしゅが頭の悪い人なのか。
とにかくこの状況を打破しなければいけない。特に重要な事項としては、だっしゅと彼女が密接になっていくのを阻止しなければいけないことだ。
――もう失恋はいやだ。
震え始めた体をぐっと抑えた。
「彼女は人間、だっしゅはニワトリ星人、恋愛なんて成り立たないわよ」
「彼女はニワトリ星人と知ってて、このラブレターをくれたんだ」
いやになるくらいのプラス思考だ。……仕方ない、言いたくなかったけど。
「それはラブレターじゃないわよ」
「……え?」
「ラブレターにしては素っ気ないし、それにだっしゅを見た時、ずっと好きだった人とは思えない反応だったもの」
「なんでそんな風に言い切れるんだよ」
「だてにメルヘン界に長居してないわよ」
「それはキャンディーの勝手なメルヘン界のことだろ!」
涙が出そうになった。髪金とかにそういう風に言われるのはなんともないけど、だっしゅから言われるのはきつかった。
なんでこんなつらい想いしないとだめなの……。
私とだっしゅを沈黙が包んだ。あれだけ浮かれてた事からすると、よほどうれしかったんだろう。でもそれを自分のために否定してしまった。
――最低だな、私。