表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/61

第3章 3幕 HE IS エンガチョ

 みんな、髪金を見ていた。髪金は引きつった笑みを浮かべながら、額に汗をかき、がくがくと震えている。


 トロ子は予知夢を見ることができた。みんなそれを知っていたし、その正確さを疑う余地はなかった。

 ただトロ子は気付いていないのかもしれないけど、予知夢を見るとき決まって寝言をいう癖があった。その寝言が髪金の死を予知していたから、ババ抜きをやっていた私たちの手は完全に止まってしまい、髪金にいたっては今引いたババを落とすほど動揺していた。

 この空気を作った当事者であるトロ子は、むくっと起き上がったかと思うと、無言のままダンボールの裏へ入っていった。


 「…聞き違いだよな?」

 恐る恐る髪金が聞いてきた。返答に困っていると、リーダーが情もなく言い切った。

 「ご臨終様」

 「殺すな!」

 「トロ子の予知は百発百中だしな」

 「今のうちにお礼を言っておくよ。僕たちを救ってくれてありがとう」

 クール、その前にあんたも死んだでしょ。

 「なぁ、どうしたらいいと思う?」

 髪金はかなり困惑しているのか、おどおどしている。

 「ねぇ、見て!髪金の保険で今までの借金が返済できるわ!」

 「ということは、ボールダンに追加武器が!?」

 「ちゃんとした部屋を借りるとかね」

 なんてメルヘン女とバカにする仕返しに冗談を言ってみたけど、当事者としては気が気じゃないだろう。髪金の顔からは完全に血の気がひいていた。

 「どうしよう、クール」

 助けを求めた髪金の手を、クールは機敏に体を反って避ける。髪金の視線に、リーダーも慌てて立ち上がった。

 「その不幸をうつさないでくれ!エンガチョ!」

 二人は我先にと部屋に戻っていった。髪金は涙を浮かべながら「待ってくれよ」と追いかけた。


 ひと騒動が起きた部屋は、私とキャバクラだけになった。

 髪金を救わないとね、と話しかける。けど、キャバクラはまったく興味がないのか話をガラリと変えた。

 「…だっしゅはこの部屋のコのことが好きなようね?」

 そう言って見つめる彼女の瞳は、何かを捕らえるような鋭さを持っていた。

 「どうするの?好きなんでしょ、だっしゅのこと」

 「ば、バカな事言わないでよ!」

 強く否定したけど、どもってしまって、明らかに動揺してる事がバレバレだった。

 「私ね、キャンディー達と彼女が話しているのを見ていたのよ」

 そう話しかける彼女は、何かを企んでいる怪しい表情に変わっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介登場人物
HONなび
Wandering Network
ネット小説ランキング
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
こちらもNEWVEL
こちらもカテゴリ別
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ