表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/61

第3章 2幕 髪金の笑顔

 「よし、こっちはOKだ」

 「そうですか、では始めますか。こっちには爆弾があるんです!」

 「考え直すんだロボ」


 さっきまでのやりとりが再開された。たださっきまでとは違い、作戦決行のためにだいぶ芝居じみたものになっていて、緊迫感はよりなくなっていた。リーダーの言葉はただの棒読みだし、最強さんに関してはセリフのメモ紙すらだしていた。挙げ句、みんなの目線が捕獲係であるクールさんに向けられていて、定位置に着くまでの時間稼ぎであることがバレバレだった。

 幸い相手がロボのおかげか、気付かれてはいないみたいだけれども。

 捕獲位置に網を持ったクールさんが着くと、髪金が作戦決行のウインクを送ってきた。ただ逆の目も閉じていて、ウインクというより瞬きに等しかった。


 「ロボ、オイルだ!」

 髪金が投げたトラップに、案の定、ロボは猫のように飛びついた。オイルでじゃれているロボに、クールさんがさっと網をかける。捕獲完了。

 「騙しましたね!」

 「騙される方が悪い。少し動かないでいてもらおうか、ポンコツ」

 髪金はショートさせるために、ロボの頭から水をかけた。プスプスという音と共に、ロボから黒い煙が上がる。

 「こんな簡単にいくとはな」

 リーダーは胸をなでおろす。みんなも安堵の表情を浮かべた。


 ただそんな安堵の時間もつかの間だった。


 ロボはすくっと立ち上がり、私達を見た。

 「その程度の水量じゃやられませんよ、アイビーム!」

 ロボの目からまばゆい光線が放たれる。髪金は寸でのところでそれを交わしたけど、よけた光線がクールさんを直撃した。激しい閃光と音をあげ、クールさんはバタンと倒れた。

 「なんだあれ!?」

 最強さんが驚きを口にする。

 「私は偉大なるスーパーロボットのパーツ! こんなことではやられませんよ!」

 次に放たれたビームは、部屋の壁に大きな穴を開けた。ロボは殺戮兵器と化していた。

 みんなその威力に危険を感じたのか、誰かの後ろに隠れるように、一歩一歩と下がっていった。絶体絶命。

 そして先頭が私になった時、次のアイビームが放たれていた。


 私は何も出来ずにいた。ただ迫り来る光線をじっと見ていた。私の前を遮る影を見ていただけだった。

 激しい閃光に目を閉じる。

 一瞬見えた影に不安がよぎる。

 ビームの閃光でまだおぼつかない視界に、私の前で血だらけで立っている髪金がいた。焦げたような匂いとその真っ赤な体は、絶望以外の何物でもなかった。


 みんなが髪金を見ていた。見ることしか出来なかった。そしてその現実を受け止めざるを得なかった。


 ――また助けられた。


 その瞬間、涙が溢れてきた。声をかけたくてもかけられずにいた。

 うつろな目をした髪金は、私に振り返りかすかに笑った。

 「ほんとハゲてるな、背後霊」

 ぼんやりと見えるその笑顔は、いつものバカなことばかりしている時の笑顔と同じものだった。


 髪金はロボに向かってまっすぐに、ただまっすぐに走っていた。遠く、遠く離れていった。

 そして最後のアイビームの音が響いた。

 髪金はよける事もせず、それを受け止め、ロボにしがみついた。

 「これくらいの量ならさすがに壊れるだろ? ……あっかい、あっかい水をたっぷり飲めよ」

 ボンという音と共に真っ赤になった髪金と、真っ赤になったロボは重なるように崩れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介登場人物
HONなび
Wandering Network
ネット小説ランキング
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
こちらもNEWVEL
こちらもカテゴリ別
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ