第2章 最終幕 I‘m ニワトリ星人
――見つかった!
ダンボール裏では、怒りの形相のリーダーがこっちを見ている。
あのリーダーの暴走が私たちに向けられると思うと、ゾッとした。大変なことになってしまった……。
ただこうなってしまった以上、この状況をどう打破するかを考えなくては。
「…誰?」
そりゃそうよね、誰って思うよね。
「あの、その……」
だっしゅが頼りなく、オドオドと声を出す。さっきまでの積極的なだっしゅは影を潜めている。
彼女はドアに隠れ、怪しい人?と聞いてきた。はい、怪しい人ですと答える人はまずいない。だっしゅは相変わらずオドオドしていて、彼女の質問に答えられないでいる。
「……怪しい」
「あ、怪しくないですよ、ほんと」
彼女はドアに隠れたまま出てこない。やはり怪しいか。ここで事を大きくしては、警察に通報されるかもしれない。
「どうしようか」とだっしゅに聞こうとしたら、その前にだっしゅが「どうしようか」と聞いてきた。私に頼っちゃうんですか……。
「とりあえず挨拶して真摯な態度を見せるべきじゃない?」と言うと、だっしゅは「なるほど」と頷いた。
「…こ、こここここ」
挨拶も出来ないの!?
「ニワトリ星人!?」
なにそれ!?
彼女は興味深そうに身を乗り出していた。
「そ、そう、僕らはニワトリ星人。ね?」
「何よ、ニワトリ星人って!」
すると彼女は再びドアに隠れた。ニワトリ星人だったらよかったの!?
「警察……呼びますよ?」
バカ!と、だっしゅに小声で言った。
「じ、実はぁ、私達、恋で悩んでいるあなたを救うために現れた、キューピットなんです♪」
彼女はポケットから携帯を取り出す。
「よくわかりましたね!そうです、ニワトリ星人です!コケ」
彼女は携帯をポケットに入れなおし、驚いたようにドアから出てきた。どうやらニワトリ星人はOKのようだ。
「なんでニワトリ星人が私のところに?」
知らないよ、こっちが聞きたいよ。
だっしゅに「どうするのよ」と目を向けると、もう私に「任せました」みたいな目を向けていた。どうやらニワトリ星人としての対応は、私がやらなければいけないみたいだ。
「じ、実はUFOが不時着しまして。近くにあったこの部屋で休ませてもらっていたところです」
「そうなんですか」
いいんだ、それでいいんだ、あなたは。
その時、だっしゅが何もない壁を見てつぶやいた。
「…誰、お前?」
「…どうしたの?」
「あいつ」
と、指差した先は白い壁でしかない。小声でだっしゅに「変なアドリブやめてよ」と言ったけど、だっしゅは真剣な顔で言った。
「いるじゃないか」
彼女も首を傾げている。
「…誰?」
だっしゅの行動は不可解なものだった。
*
その日の夕方、ロボは電話回線から外部にアクセスを行っていた。
「ネットワーク接続OK。データ受信、データ受信。申し訳ありません、果たし状は渡せませんでした。……はい、わかりました、作戦を変更します。命令次第、自爆装置でボールダンを破壊します。それで偉大なるスーパーロボットが完成するのですね?」
そのやりとりをダンボール裏からキャバクラが見ている。ロボはそれに気付いていなかった。
「……偉大なるミスター?スパイってことかしら?あらあら、大変だ。でも、興味があるのは偉大なるスーパーロボットっていう言葉。それはボールダンより強いかしら?ちゃんと守ってくれるかしら?……でもね、ロボ。もっと強いロボットが私達を守ってくれるから、あなたのロボットは必要ないのよ」
キャバクラは、小さく微笑んだ。