表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/61

第2章 第13幕 だっしゅの迷い

 そんな勝負の余韻も束の間、ビーッ! ビーッ! と、慌しくサイレンが鳴り響いた。

 「まもなく住人が到達します」というトロ子の冷静な声が、この戦いのヒートを覚ます。

 「なぜそれをはやく言わない!」慌てるリーダーの言葉に、「話に入り込む隙がなかった」と冷静にトロ子は返す。確かにあの空気の中に入り込む事は難しかっただろうな。

 「ぬぬ! みんな急いで戻るぞ!だっしゅ、勝負は百歩譲って貴様の勝ちにしてやるが、恋愛はご法度だからな!」

 各々が痕跡を残していないか確認しながら、急いでダンボール裏に隠れ始める中、だっしゅだけは隠れようともせず、部屋の真ん中で何かを考えているようだった。

 またいつもの『何を考えているかわかんないタイム』か?

 だっしゅに話しかけようとしたが、部屋の住人である彼女の足音が近づいているのが、階段に設置している盗聴器を通じて流れている部屋のスピーカーから認識することが出来た。

 近いな、とにかく今はダンボール裏に隠れることが先決だ。

 俺はだっしゅに急げよとだけ言ってダンボール裏に隠れた。



  *



 「どうしたの?」

 こんな緊急事態なのに、動こうとしないだっしゅに、私は声を掛けた。

 「あのさ、キャンディー。恋愛に詳しいキャンディーだから思い切って聞いてみるけどさ」

 え? ……まさか!? まだ心の準備できてないよ?こんな慌しい時に、そんな話しなくても良くない? でもだっしゅが私のことを思っていてくれてるなんて!

 「……彼女に挨拶しようと思うんだけど、なんて言ったらいいかな?」


 ……。


 びっくりした。勘違いしていた私にもびっくりだけど、住民との接触は禁止、まして恋愛ご法度の規則の中で、何事にも消極的なだっしゅが積極的にアプローチしようとしている事に。

 だっしゅは、その消極的な性格、つまり逃げることに卓越したセンスを買われボルレンジャーになったほど、積極性が欠けている。だからメンバーの中では目立たないタイプだし、よく言えばクールな感じ。その変な魅力に魅かれてしまった私ではあるけれども。

 うーん、まさか消極的なだっしゅを積極的にするほどの力がラブレターにあるとは。こんなことなら私も出しておくべきだった。

 って、後悔しても仕方ない。とにかく今はだっしゅの暴走を止めることが先決だ。

 「私たちは秘密組織なのよ? リーダーが怒るわよ? それに……私がいるじゃない?」

 思わず言っちゃった。大胆すぎた? だっしゅはなんて言ってくれるだろう? ああ、ドキドキしてきた! 頬が熱いよ!

 「でもせっかくラブレターもらったのに、挨拶しないなんて」

 スルー! 私の気持ち、思いっきりスルー! 赤面の私、どうしてくれるのよ!! ……まぁ、いいわ。恋愛の気持ちはぐっと我慢するとして、とにかく今は彼女が帰ってくる前に隠れる事が先決。

 だっしゅの手を引こうと手を伸ばしたけど、まるで手を繋いだみたいで思わず放してしまった。だっしゅの手ってあったかい。こういう手って私、好きだな。

 そんなときめいている間に、事態は最悪な方に向っていた。

 部屋に流れる足音は、いつの間にかすぐそこで生じていて、気付いた時には部屋の扉が開き、私達二人を不思議そうに見る彼女とご対面してしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介登場人物
HONなび
Wandering Network
ネット小説ランキング
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
こちらもNEWVEL
こちらもカテゴリ別
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ