第2章 第11幕 化身、現る
俺はその場に崩れ落ち、膝をついた。
だっしゅは、出来ないスキップをしながら浮かれている。
込み上げてくる悔しさに耐えられなくなり、だっしゅから目を逸らす。その先では、クールの目が待っていた。普段は気にもかけないその目に、不思議な友情が芽生え始めているのを感じた。これほどクールを身近に感じたことはなく、妙な心のつながりが出来たように感じた。
俺は脳裏に浮かんだあることを思い、目配せをすると、クールがこくりとうなずいた。これがアイコンタクトというものか。
―― クク、だっしゅ、お前一人にいい思いはさせない!
俺はゆっくり息を吸い込み、そして一瞬の間の後、クールと共に叫んだ。
「リーダー! だっしゅが恋愛ご法度なのにラブレターをもらいました!」
「! 貴様ら、リーダーを呼ぶなんて、卑怯だぞ!」
「ひとりだけシアワセになるなんて許さない!」
なんとでも言ってくれ。卑劣だろうがなんだろうが、俺はお前のシアワセを許しはしない!
「蘇れ、悪の化身! リーダー! リーダー!」
部屋の扉がバン! と開いた。その奥では「クフォ〜」という機械的な吐息を吐くリーダーが、恐ろしい形相で仁王立ちしていた。
こえぇ。
俺は心の底から恐怖した。最近のリーダーは、俺が憧れていた頃の面影は全くなくなっていたが、こうしてみるとやはりすげぇと感じざるを得ない。
こみ上げる尿意を俺は必至にこらえた。が、クールは無理だったようだ。強烈なにおいが部屋に充満した。……どうも脱糞したようだ。
「恋愛してる奴、いねぇがぁ。恋愛してる奴、いねぇがぁ。んん? なんか匂いがするぞ? 恋愛、恋愛の匂いだ」
いや、うんこの臭いです、心の中でつぶやいた。
「んん? その男、この間、連れていた女と違うぞ? んん? 先週の合コン良かったよ、あの後どうだったんだ?」
どうもリーダーには妄想が見えているらしく、誰かと話している。たまらないイカれ具合だ。
「くくく、壊れろ壊れろ! 恋愛など成敗してくれるわ! ぐぎょぉ!」
生き物が発したとは思えない雄たけびに、他のボルレンジャーも集まってきた。