第2章 第4幕 らぶれたぁ ふろむ
「いいな、おい!」
だっしゅさんは、そんなわけないよと言いながらも、明らかに動揺し、足をがくがくとさせていた。そんな足で歩こうとするものだから、倒れそうになり、体を支えるため壁に手をついた。
「大丈夫か?」
髪金の言葉にだっしゅさんは返事をせず、壁についた手をじっと見ている。
その手の下には、まるでぽつんと咲いた花のようなピンク色の封筒が貼られていた。
だっしゅさんはその封筒をそっと壁からはがし、丁寧に封を開けた。
「…ボルレンジャー、7日後、日の明かり公園で待つ」
日の明かり公園、二つ先の駅にある大きな公園のことで、ボールダンは元々その公園のプールから発進していたらしい。ただ湿気でダンボールがフニャフニャになるから今は使っていないとリーダーは言っていた。
なんの手紙だろうと私は思ったけど、二人の行き着いた答えは同じだったらしく、私を見て叫んだ。
「ラブレター!?」
いや、私に言われても……。
ただ文章は無骨だけれど、ピンク色の封筒からすればそうかもしれない。
きっと私もそういう風にしか……そう考えた瞬間、顔が熱くなった。なに考えてるんだろ……。
「どうした、顔、赤いぞ」
髪金の言葉にドキッとし、慌てて大丈夫と、親指でグッドポーズをしてしまった。動揺しすぎ、私……。
「しかしよ、いきなりトロ子の言ってた事が当たりか!?」
「お、お、おおおおおおお、おちつけ、ラ、ラ、ラッブレターのわけないでしょ!」
「でもよぉ、公園で待つだぜ!? ラブレター以外に何があるよ!?」
いろいろあると言いたかったけど、二人の妙にハイな夢気分を壊したくなかったから言葉を止めた。そしてゆっくりとグッドポーズをさげた。
「相手は誰からだよ?」
「カナダ!」
二人して言う。あきれるくらいのハイテンションだ。しかもその表情はデレデレの骨頂である。
確かにだっしゅさんがデレデレになるのは分かる。でも髪金はなぜデレデレしているのか……。
貰っているのは髪金じゃないよと、傷つけないように声をかけた……心の中で。
「……で、誰から?」
だっしゅさんが宛名をなかなか言わないため、髪金はもう1度聞いた。
だっしゅさんは不思議そうな顔を浮かべている
「書いてない。宛名が書いてない」
「…心当たりは?」
こんな職場環境で心当たりなんてと思ったけど、二人には思い当たる節があるのか、ほとんど同時に「そういえば昨日!」と言った。