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うさぎのお巡りさん⑨
今回は唯花目線です。
何度もかき消そうとしても頭に浮かんでくる光景に私は唇を噛んだ。
珍しく迷わずに辿り着いたショップ内で楽しげに話す男女の姿。
店員さんだと分かる制服に身を包んだ可愛らしい女性に、照れくさそうに笑うのは紛れもなく春樹さんで。そのまさにお似合いのカップルと言った感じの二人に、私は来た道を引き返していた。
けれどどこに行けるわけでもなく、とりあえず駅前まで戻ってきて、ぼうっと行き交う人を眺めていた。
「あら……? 唯花さん?」
「あ……」
ぼうっとしていた私の目の前にひょっこりと顔を出したのは、ビシッとしたスーツを着こなした片山さんだった。
「また迷子さんなの? 彼、だいぶ前に退社してたけど……」
「あ……えと……」
しどろもどろになりながら、片山さんに春樹さんとショップで待ち合わせをしていることだけを話した。
「それならすぐそこだし、案内しましょうか?」
「い、いえ! いいんです……」
親切に提案してくれた片山さんに私はブンブンと音がなりそうな程、激しく首を振った。
あまりに勢いよく首を振ったためか、涙が滲んでくる。
「……何かあったの?」
片山さんの一言で私の涙は限界を突破し、堰を切って泣き出してしまった。




