うさぎのお巡りさん ⑥
時間だけが、ただただ無情に過ぎていく。それによって募る、焦りと不安。
暗い夜空に浮かぶ月を見上げ、唯花のことを考える。
今頃、彼女は泣いてはいないだろうか。事故や何かに巻き込まれてはいないだろうか。
頭に浮かぶのは唯花の泣き顔で、最悪の結果すら頭を掠める。
どんどん悪い方に考えてしまうのを何とか振り払おうと、頭を振ったその時だった。
「下北くん!」
聞き覚えのある上司の声に振り返ると、まだ小さいけれどこちらに手を振る片山さんの姿が見えた。
「唯花……!」
片山さんの背後にチラリと見えた姿に、一気に駆け出す。
探していた存在を確かめたくて、駆け寄った勢いのまま、彼女を抱きしめた。
「このバカ! 待ってろって言っただろ!」
「ごめんなさいぃ……」
怒鳴りつけたのが怖かったのか、唯花は泣き出した。
ともあれ無事だったことにホッとして、泣きじゃくる彼女の頭を優しく撫でてやった。
俺たちの様子に苦笑しつつ、片山さんが声をかけてくる。
「彼女さん、隣駅まで来てたわ。気付けて良かった」
安堵した様子の片山さんは、仕事中にはめったに見せない優しい微笑みで唯花を見つめていた。
「すみません。ご迷惑を……」
「いいのよ。さて……無事お巡りさんに引き渡せたことだし、退散するわ。じゃあね」
片山さんは悪戯っぽくウィンクをすると、踵を返し、颯爽と去っていった。
その後ろ姿を見送って、唯花に視線を戻すと、涙の浮かんだ瞳とぶつかった。
「泣き止んだ?」
「ん……ごめんなさい……」
零れそうな涙を拭ってやり、俺は唯花の額に軽く口付けた。
「俺たちも帰ろう」
コクンと頷いた唯花の手をしっかり握り、俺たちは並んで帰路についた。