うさぎのお巡りさん ⑤
長らくお待たせしました。
今回は唯花目線。
なんだか10話はいきそうな予感
のんびり更新ですが、お付き合いくださいませ。
「ん〜〜どうしよ……」
迷子になってもうどれくらいが経ったのか。
頼りの彼に何度電話をしても、機械的な女の人が同じアナウンスを繰り返すだけ。一応メールは来てたけど、あんまり遅いから待てなくなって一人で帰ろうなんて、自分でもバカなことをしたと思う。
「この道……知ってる……?」
今歩いてる道が知ってる道なのか、それとも知らない道なのか。自分自身に問いかけてみてもいまいち確信は持てなくて、とりあえず前に前にと歩いていく。
と、背後から誰かに肩を叩かれ、私は反射的に振り返った。
「谷川……唯花さんよね?」
「にゃ? そう、ですけど……」
やっぱり、と笑ったその人は、パンツスーツが似合ういかにもキャリアウーマンといった感じのとても綺麗な女の人だった。
でも彼女に見覚えはない。それに何がやっぱりなのかと首を傾げると、彼女は私の疑問に気付いたのか自己紹介を始めた。
「私、片山沙織です。あなたの彼氏さんの上司なの」
「春樹さんの?」
私の問いに頷いた片山さんは、とても優しそうな人だと感じた。
「ところで……こんなところでどうしたの?」
「あ……えと……迷っちゃって」
私の答えに片山さんはクスリと笑った。
「あの……」
「ごめんなさい。下北くんに聞いてた通りだと思って」
春樹さんは私のことを何と言っていたんだろう。
ちょっと気になったけど、片山さんの次の問いかけに聞きそびれてしまった。
「彼に連絡はしたの?」
「それが……繋がらなくて……」
「それは困ったわね。彼とは近所なんでしょ?」
コクンと頷くと、片山さんは大丈夫よ、と微笑んだ。
「彼の家なら知ってるから。行きましょう、迷子さん」
そう言って先立って歩き出した片山さんを私は慌てて追いかけたのだった。