うさぎのお巡りさん ②
ちゃんと告白したはずなのに、何をどう解釈したのか、唯花は俺と付き合ってるなんて思ってなかったらしい。
それでも改めて告白すると、俺の好きな笑顔と一緒に大きく頷いてくれた。
「下北くん、どうしたの?浮かない顔ね」
「あ……いえ……」
パソコンを打つ手がいつのまにか止まっていたことに、声をかけられてやっと気付く。
しまった、まだ仕事中だってのに……チラリといつのまにか傍らに立っていた上司、片山沙織さんを見上げると、彼女は苦笑いを浮かべて俺を見ていた。
「愛しの彼女のことでも考えてたのかしら?」
「あー……ははっ」
仕事の飲み会でちょっと口を滑らせてしまってからというもの、完全におちょくりの対象になった。まさか片山さんにまで言われるとは思ってもみなかったけど。
片山さんはキャリアウーマンの鏡、と言った感じでバリバリに仕事をこなす人だ。仕事には厳しいが、個人の能力に合わせて適材適所で仕事を割り振る為みんなから慕われてる。
「彼女が心配かもしれないけど、仕事量は減らさないから。定時にあがりたければ頑張りなさい」
言われてふと時計を見れば、定時まで一時間を切っていた。
仕事が終わると唯花と駅で待ち合わせをしている。駅までの道のりを覚えたとはいえ、まだまだ心配はつきない彼女を家まで送るためだ。 早くしないと本気で定時にあがれなくなりそうだ。
慌てて手を動かし始める俺の肩ををポンと叩き、片山さんは颯爽と去っていった。