回帰
ある日の朝、HRにて
「今ーからこーーが新ーくこのー校に来るーーーです。」
ノイズ混じりの担任の声。
「ーーーーーーーーー。」
ざわつく顔のない同年代の声。
ただ、僕のちっぽけな平穏を壊さないことを願おう。
その同年代。は転校生というらしい。
紹介されたらしいが知らなかった。
そしてその転校生は案の定というべきか帰りのHR後、早速僕の日常を破壊しに来た。
「ねぇねぇ、ーーー、今日暇?」
楽しそうに話しかけてくんな
「帰れ。僕は忙しい。」
「そう言わずにサァ、今日一日で話しかけてこなかったこのクラスのやつはキミだけだ。僕はそんなキミに興味が湧いた。」
そんなことを飄々と笑いながら言う。
面白いか
俺は面白くない。
「なにはともあれ、俺は忙しい。その辺にいる誰かに一緒に帰ってもらえ。」
「何だ連れないなぁ。そんなんじゃモテないゾ?」
余計なお世話だ。
何より、今日は、あれがあるんだ。
帰宅する。
考える。
ヤツのことを
《《考えてしまった》》
途端に感じる、複数の気配、視線、囁き声
老若男女いろいろなものを感じる。
自らと他との境界がぐずぐずと崩れだし、周りと一体化していくような感覚
はっ
気づけば、気配は途切れていた。
いる場所はいつもと変わらず
自室
私らの、自室。
「危͖̘͐ね̩̝̖̥̑̾̾̂̈́ぇ̛̒̿͊̈ͤ̆̿な̧̝͇͚̋͗͋ͩ̇。̴͖̙̜͋̒ͧ̋こ̴̜̎̚̕͝の͉̪̞͗̓調̜̗̟ͨ子̷̤̤̦̗̂̊̚だ̩̝͉͇̞̞ͬ̾̓と̸͓̘̟̙͙̏̿̂、̱͚̺͑̄̏ͣ͡あ̛̟ͥ͡と̘͉̓ͬど̸̳̫̕ん̣̼̻͒̈́̆̚͞く͛̌̉͏͖̗͂ら̻͇̰̐ͣ̆͝͝い̫̖̹̿̏ͣ持̶̭͍̥͢͞つ̩͉̬̗͑̐͝の̷̧̩̺͇ͥͨや̘̕ら̭̤̤̘ͭ̍」
俺の自室だ。
翌日。登校する。
いつもと代わり映えのしない日常。
ではなく、
「おはよう!ーーーー」
「なんだ。帰れ。」
「ははは、早すぎでしょ。やっぱりそうだった。キミは面白い。」
囁くように、俺にだけ聞こえるように喋る。
聞き覚えのあるフレーズ。
感じる既視感。
噛み潰す。
「俺なんかに関わるな。俺は一人と孤独を愛している。」
呆れたように彼は言う。
「要は其れ、ボッチでコミュ障ってことで良き?」
反論を返せなかった。
その日からより一層奴の攻撃は激しくなった。
「ーーーー!ここにいたの。一緒に帰ろう。」
囁く時間が長引く。
視線が増える。
思考にノイズがよく走る。
あれが手を振る。
待っててとでも言うように。
俺は自嘲する。
「待つわけが、ないだろうが、戯け。俺は、俺だ。」
噛みしめるように、確認するように、言う。
その深みを表すことはできない。
周囲とよく一体感を感じる。
「俺達、友達だよね。ーー。」
まるで薄いガラスに石を投げつけるかのように俺の日常はひび割れ、砕け散り、ばらばらになる。
そういえば、子供の頃に家に石を投げ込んで遊んだナァ。
既に30年は人が住んでいないであろう廃墟を見て思う。
禁足地と定められた山を見て思う。
あぁ、あそこに入ったこともあったなぁ。
昔、人死が出てから、警察が結構真面目に警備してるのに
道を歩いていてよく思う
あそこでもーーだなぁ。
懐かしいな。
あいつ。生きてるかな?
やめろ。もっと喋ろうぜ。やめろ。仲良くしようぜ。やめろ。こいよ。タノシクヤロウジャネェノ。
翌日も翌々日もその次の週もずっとあいつは俺達にいや、俺だけに声をかけてきた。
なんで。拒否してるのに。
そして、転校から2ヶ月が経った頃
彼が死んだ。
交通事故だそうだ。
足元が揺れる。
思考が進む。
余計なことばかり頭を突く。
この村での年間交通事故数、軽重を問わなければ、134件
村の人口は600も居ないのに。
その中のひとりになった。
まただ。
僕はもう限界なのかな?
私はもう終わるのか?
歡迎するよ。
ーーーー。
こうやって僕の、俺の、私の、おいらの、こっちの、あっしの、あたしの、うちの
日常は回帰する。何度でも、何度でも。そこに僕の意志は介在していない。




