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桜を探す会 1

 時雨ちゃん・胡桃ちゃん・音々。五年ぶりに再会した友人達は心身ともに大人になっていた。一緒の思い出を持っているのに、私は少し前の事だと思っていて、友人達は遠い過去のように思っている。それもこれも、私が何の相談もせずにこの地を離れたからだ。


 だから、私は決めた。


「明日三人で遊びに行こうよ!」


「いや、無理」      


 誘いは断られ、しかもビールを飲むついで扱いにされた。


「なんで無理なのさ!」 


「アタシらは仕事してんだよ。となれば予定が合うのは休日。しかも休日は仕事によって違う。そして何よりも、アタシは胡桃が嫌いだ」


「友達じゃん!」


「あんな淫魔は友達じゃない! お前こそ考え直せ! 公共の場でチュッチュッされたんだぞ!? もっと警戒しろよ!」


 正論だ。しかし、ビールを飲みながら煙草を吸う時雨ちゃんに言われると、なんか認めたくない気持ちになるのは何故だろう。


「それにさ、遊びに行きたいなら……ア、アタシが、連れてってやるよ!」


「それじゃ駄目なんだよ!」


「えー……」


「私はまたみんなで遊びたいの! 私が知らない間にみんな成長してさ! 友達なはずなのに友達だと思えないのが嫌なの!」


「……音々だけじゃ、駄目か?」


「ヤッ!」


「クソガキが……! ハァ……分かった分かった! じゃあ賛成だ」


「当たり前! 時雨ちゃんがストッパーにならなきゃ、胡桃ちゃんが私に何をするのか分かったものじゃないんだから!」


「バリバリ警戒してんじゃねぇか! それでよく友達に戻りたいとか言えたな!」


 その日以降、みんなの予定が合う日を尋ねて回った。音々は時雨ちゃんに合わせると言ってくれたけど、胡桃ちゃんは時雨ちゃんを除け者にしようとして強敵だった。


 二週間後の日曜日、朝八時。私達四人は時雨ちゃんの家の前で集結した。時雨ちゃんはともかく、音々も胡桃ちゃんも気合いの入った服で来てくれた。音々は小さくて愛くるしい見た目に合った・胡桃ちゃん・音々。五年ぶりに再会した友人達は心身ともに大人になっていた。一緒の思い出を持っているのに、私は少し前の事だと思っていて、友人達は遠い過去のように思っている。それもこれも、私が何の相談もせずにこの地を離れたからだ。


 だから、私は決めた。


「明日三人で遊びに行こうよ!」


「いや、無理」      


 誘いは断られ、しかもビールを飲むついで扱いにされた。


「なんで無理なのさ!」 


「アタシらは仕事してんだよ。となれば予定が合うのは休日。しかも休日は仕事によって違う。そして何よりも、アタシは胡桃が嫌いだ」


「友達じゃん!」


「あんな淫魔は友達じゃない! お前こそ考え直せ! 公共の場でチュッチュッされたんだぞ!? もっと警戒しろよ!」


 正論だ。しかし、ビールを飲みながら煙草を吸う時雨ちゃんに言われると、なんか認めたくない気持ちになるのは何故だろう。


「それにさ、遊びに行きたいなら……ア、アタシが、連れてってやるよ!」


「それじゃ駄目なんだよ!」


「えー……」


「私はまたみんなで遊びたいの! 私が知らない間にみんな成長してさ! 友達なはずなのに友達だと思えないのが嫌なの!」


「……音々だけじゃ、駄目か?」


「ヤッ!」


「クソガキが……! ハァ……分かった分かった! じゃあ賛成だ」


「当たり前! 時雨ちゃんがストッパーにならなきゃ、胡桃ちゃんが私に何をするのか分かったものじゃないんだから!」


「バリバリ警戒してんじゃねぇか! それでよく友達に戻りたいとか言えたな!」


 その日以降、みんなの予定が合う日を尋ねて回った。音々は時雨ちゃんに合わせると言ってくれたけど、胡桃ちゃんは時雨ちゃんを除け者にしようとして強敵だった。


 三週間後の日曜日、朝八時。私達四人は時雨ちゃんの家の前で集結した。時雨ちゃんはともかく、音々も胡桃ちゃんも気合いの入った服で来てくれた。音々は緑のカーディガンにブラウンのチェック柄の長いスカートで、頭に漫画家が被ってそうな帽子を被っている。胡桃ちゃんは清楚そうな服に見えるが、着ている本人の所為でどうしてもアダルトに見える。


「本当にいるし……別にアンタは家で待ってていいのよ、時雨」


「怖い顔したボディーガードはいた方がいいだろ? 下心を持った奴が霞を襲うかもしれないしな」


「ん~! 音々は今日も可愛いね~!」


「エヘヘ……! みんなで遊びに行くのなんて久しぶりだから、張り切っちゃった……!」


「二人共! 音々を見習って!」


「「いや、無理でしょ」」

 

「あ、あの、霞ちゃん……。今日は何処に行くの……?」


「そういえば、何も聞かされてないわね」


「お前ら本当に霞の友達か? 今は五月で、桜なんてとっくに散ってる。そして誰かさんがゴネる所為でアタシらは花見をし損ねた。となれば答えは」


「そう! 桜を探してお花見をするよ!」


 私達はレンタカーに乗り込み、早速出発した。今日の日の為に、桜の木がある場所はリサーチ済みだ。全部で五か所あり、それらを見て回って、桜が咲いている場所でお花見をする。例え桜が散っていても、見て回っていれば一日中四人でいられる。その間に関係を完全に修復して、ついでに時雨ちゃんと胡桃ちゃんを仲良くさせる算段だ。


 時雨ちゃんの汚い軽トラとは違い、レンタカーの車は綺麗で足の踏み場がある。それに隣には、可愛い可愛い音々がいて構い放題。まるで天国だ。


「ねぇ。なんで私が助手席なの? こいつが運転する車の助手席なんて、怖くて前も見てられないわ」


「文句を言うなら、今も後ろで音々にじゃれついてる霞に言ってくれ」


「は? なに平然と煙草吸おうとしてるの?」


「別にいいだろ、禁煙車じゃあるまいし」


「常識ある人間は同乗者に一言言って、了承を得たら吸うでしょ?」


「じゃあ吸っていいか?」


「それが頼む側の言い方? 言っておくけど、喫煙者は非喫煙者よりも階級は下だから」


「酷い扱いだな。お前みたいな奴がいるから、アタシら喫煙者は肩身が狭い思いをする羽目になる」


「臭くて害のある物を常用するのが悪い。それに煙草は当人だけじゃなく、周囲の人間にも害が及ぶ物。受動喫煙って知ってる?」 


「馬鹿が考えた虚言だろ。煙草ごときでイチャモン付け過ぎなんだよ。人間はそんなヤワな作りになっちゃいねぇよ」


 会話の内容はともかく、盛り上がってるようだ。本当に嫌いなら、どっちかが会話を諦めてもいいはず。こうして続くという事は、少なくとも二人は気が合う……と思いたい。


「霞ちゃん……今日も良い匂いだね……!」 


「んん~、可愛い子だね~! 嗅ぎな嗅ぎな!」


「えっと、桜を探す会の会長さんよ。お前が設定したナビに従えばいいんだよな?」


「はい、そうです! 余計な寄り道は許しません!」 


「ガッテンだ」


 こうして、私達四人の桜を探す小さな旅が始まった。

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