ショック
胡桃ちゃんの家に来ている。白を基調としたお部屋で、本棚や音楽プレイヤー、間接照明や観葉植物が置いてある。オシャレだし、何処を見ても考えられた配置で、時雨ちゃんの部屋とは真逆のお部屋だ。少し居心地が悪くて落ち着かないまである。
そんなお部屋にあるベッドに、私は座らされていた。当然の如く胡桃ちゃんは隣に位置し、私の肩を抱き、太ももを撫で回している。ベッド横の小棚に置かれたアロマの香りが甘い所為か、少し頭がボーッとする。クーラーが効いてるはずなのに、体が熱い。
「今日は来てくれてありがとう。突然招待してごめんね?」
「全然、いいよ……私も、暇、だったし……」
「どうしたの? なんだか顔が赤いけど?」
「どうしたんだろうね……?」
「服、脱ごっか」
「え……?」
胡桃ちゃんは私のシャツの裾を掴むと、ゆっくりと優しく服を脱がしていく。恥ずかしくて抵抗しようと思ったけど、どうしてか体に力が入らない。
「……霞、下着」
「時雨ちゃんのだと、小さいから……」
「つまり、いつも下着を着けてなかったんだ。へぇー」
「いつもじゃ―――ヒャッ!」
後ろから抱きしめてきた胡桃ちゃんが、私のお腹と胸を撫でてくる。胡桃ちゃんの手は冷たくて、指一本動かされるだけでも体が反応してしまう。
「ね、ねぇ……! どうして、私を……!」
「好きな人を愛する事に理由が必要かしら」
「だからって、これは段階が……!」
「もう何度もキスしてるんだから大丈夫。それに、今日で全部をやるわけじゃない。今日は触れ合うだけよ」
胡桃ちゃんの苦しそうな吐息が耳元で囁かれる。聞いてるだけで変な気分になってしまいそう。
「ヒウッ!?」
耳を舐められた。まるで迷路で遊んでいるように、胡桃ちゃんの舌が私の耳の溝を通っていく。耳の穴に近付くにつれ、胡桃ちゃんの舌の感触が濃くなっていく。抵抗しようとしたけど、やっぱり体は動かない。
「胡桃、ちゃん……汚い、よ……!」
「汚い所なんか無いわよ。アナタの何もかもは、私にとっては極上の甘味。だからゆっくりと味わって、空になるまで堪能するの」
そう囁くと、胡桃ちゃんはとうとう私の耳の穴に舌を入れてきた。ゾクゾクとする感覚が全身に広がり、舌の音が脳の中心部まで響いてくる。声が出そうになるのを堪えたけど、すぐに耐えられなくなって、私の体に激しい痺れが走った。
完全に体に力が入らなくなった私は、胡桃ちゃんの膝を枕にして横になっている。あの後、胡桃ちゃんが何をするわけでもなく、動けなくなった私を優しく介抱してくれた。
「気分は良くなった?」
「体はまだ動かせそうにないけど、意識はハッキリしてきた」
「え? もしかして、ずっと朦朧としてたの?」
「うん。胡桃ちゃんの家に入ってから急にね」
「あちゃ~……あのアロマ、効き目があるようだけど、少し効きすぎたようね」
「それより、酷いよ胡桃ちゃん。昨日連絡くれた時は遊びに来てって言ってたのに」
「その言葉がアナタに一番効果があるからよ。昔から遊ぶのが好きなアナタに」
「む~……まぁ、いいや。別に痛い思いをしたわけじゃないし。それになんだか、懐かしい感覚だったな。確か、香奈お姉ちゃんと遊んでいた時だったかな? その時の事はあんまり憶えてないけど、あの痺れる感覚は憶えてる」
「……ねぇ、霞」
「ん?」
「……やっぱり、いい。聞いても、もう意味は無いから」
そう言って、胡桃ちゃんは私の頭を撫でた。頭を撫でる手で表情は見えなかったけど、さっきの胡桃ちゃんの声色は、少し……怖かった。




