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早起きは三文の得……なんて言うけど、実際はどうなんだろう?

書いてたストック大放出(爆)





「…………ん……?」


目が覚めた俺は、瞼をゆっくりと開け、天井を見つめる。


「知らない…天井だ」


一応、お約束のセリフを呟いてみる。

知らない天井……そっか。俺、異世界に来たんだった……。


ゆっくりと身体を起こして、窓の外を見てみると、まだ太陽も出ていない様だ。


「ん…………んぅ」


隣を見ると、まだディエナは眠っている。

俺はディエナを起こさない様にベッドから抜け出し、部屋を出た。


ここ、ギルドの宿舎はコの字型に建物が建っている為、結構な広さの中庭がある。

俺は中庭に向かい、そこにある井戸で顔を洗う事にした。



「ん…ぷはぁ。さっすが井戸水なだけあって、冷たいな」


顔を洗い、一気に脳を覚醒させる。



カン…ガッ!!カン!!


「ん?」


何やら音が聞こえるが、何だ?


俺は気になって、音のする方へと向かう。

すると、そこには皮鎧らしき物を着けた案山子が数体並んでいた。


修練場…か?


その案山子の一体に剣を振るう一人の剣士。


「アレは確か…」


長い金髪を靡かせながら、舞う様に剣を振るうその人物に、俺は見覚えがあった。


「……………ふぅ」


パチパチパチパチ…


どうやら一息つくらしく、剣を鞘に納めたのを確認し、俺は拍手をしながら近付いて行った。


「誰?」

「いや〜、良いモン見させてもらったよ」


俺の拍手に振り向く剣士。

その額には、うっすらと汗が滲んでいた。


「君は昨日の…」

「まさか、こんな所で隊長さんに逢うとは思わなかったよ」


そう。剣を振るっていたのは、昨日、街に入る時に揉めた兵士達の女性隊長だった。


「しかし、国の兵である隊長さんが、何でまたギルドの修練場なんかに?」


至極真っ当な疑問だ。

国の兵士…しかも隊長クラスなんだから、城なりに専用の修練場があるだろうに…


「城の修練場は他の兵達が多くてな。それに私が修練場に行くと、注目されて落ち着かないんだ。だから、たまにこの場所を使わせて貰っている」


苦笑しながら肩を竦める隊長さん。

なるほど。ま、確かにこの人が居たら周りは注目するわな。

これだけの美人なんだから…


「大変なんだな」

「まぁ、それなりに」


さて、俺は部屋に戻りましょうかねぇ


そう思って踵を返そうとしたら…


「あの、少し聞きたい事があるのだが…」

「ん?」


隊長さんが声を掛けてきた。

…………何だろ?


「部下に聞いたのだが、昨日、君は魔法を使った…のか?」


魔法……あ〜、アレね。


「魔法っちゃ、魔法だな」

「!?じゃあ、君は魔導師なのか?」


俺の返答に目を丸くし、ズイッと顔を近付けてくる。

近いから!!顔、近いから!!


「厳密に言うと、俺は魔導師じゃないな」

「魔導師じゃない?しかし、話によると炎の魔法を使ったそうじゃないか…。しかも、無詠唱で!!」


あちゃ〜…。やっぱ、いきなり炎を出したのは不味かったかな…

何だか大事になりそうな予感が……


「一応、魔法も使えるってだけで魔導師じゃないから」


頬をひきつらせながらも答えるが


「一応!?一応で無詠唱なのか!?………………では、君は一体何なんだ?」


何なんだって言われても…。

チートです…なんて言える訳がねぇ…。


「あ〜………オールラウンダー?」

「何故、疑問系なんだ?」

「クロスレンジ…所謂、近接戦闘が得意なんだが、中・遠距離もイケる…ってトコ」

「なっ!?」


更に目を丸くする隊長さん。

いや…そんなに驚かなくても…。


「と言う事は、君は剣士なのか?」

「剣…も使えるぞ」

「『も』?」

「う〜ん…。俺の使う武器は多種多様なんだよ。ま、武器の中では一番のお気に入りは刀だな」


やはり日本人なんだから刀でしょ♪


「カタ…ナ?」


こ……この反応は、まさか……


「刀…知らない?」

「あぁ。聞いた事も見た事も無い。どの様な武器なのだ?」

「ん〜。説明しても良く解らないだろうから、実際に見た方が早いっしょ」


そう言って、俺は刀をイメージする。

え〜っと、刀…刀…。

アレで良いか。


「出ろ、氷輪丸」


空にかざした俺の手に、一振りの日本刀。

白髪ちびっこ死神隊長の氷雪系最強の斬魄刀、氷輪丸を実体化させる。

あ、便利だな。この能力…

それを見た隊長さんは


「な!?何処から出したのだ!?」


慌てる慌てる♪


「ま、それは内緒っつー事で♪」


そして、俺は氷輪丸を渡す。


「これが?」

「あぁ。それが刀だ」


鞘から抜くと、そこには一点の曇りの無い美しい刀身。

そして、綺麗に波打つ波紋。


「う…美しいな」

「だろ?」

「だが、少々細くないか?これでは、打ち合った時に折れてしまうのでは……」


そりゃ、西洋剣に比べたら細いけどさ…


「ま、貸してみ?」

「あぁ」


俺は隊長さんから氷輪丸を受け取ると、一体の案山子の前に立つ。


「良く見とけよ」


そう言って、氷輪丸を腰の横に持っていき腰を落とし構える。

所謂、居合い…抜刀術の構えだ。


さて…上手く出来るかな…


俺は呼吸を整える。


「…………………フッ!!!!」


俺は小さく息を吐き出し、抜刀・斬撃・納刀を一瞬で行う。


「……何だ?今、何かしたのか?」


聞いてくる隊長さんの言葉を聞き流し、俺は刀身を完全に鞘に納める。


チン…


鍔と鞘の重なる音が響いたと同時に、目の前の案山子がズッ…と腰辺りから肩口まで綺麗に切断される。


「!?!?!?」


その現象に驚く隊長さん。

そりゃ、そうだろう。西洋剣では案山子の支柱に食い込む事はあるが、切断…しかも、皮鎧ごと綺麗に斬る等は、なかなか出来ないだろう。


「ま、こんな感じだな」

「こんな感じって…な、何なんだ!?この切れ味は!!」


案山子をマジマジと見ている隊長さん。


「我々が所持している剣等とは比べ物にならんな…」


そりゃそうでしょ。この刀、死神さんの隊長クラスの斬魄刀なんだし…


「ここまで扱うには、それなりに修練は必要だけどね」

「そうか…。君はギルドに入っているのか?」

「まぁ、一応。つーか、入ってなけりゃ宿舎使えねぇし」


隊長さんは顎に手をやり、暫し思案のポーズ。


「ふむ…。なら先程の技量からして、かなりの高ランク者とみたが…ランクは?」

「ランク?ランクはEだよ」


あ、目が点になってら。


「………E?」

「そぅ」

「な!?そんな訳が無いだろう!?だって、あれだけの技量がありながら!!??」


両断された案山子を指差しながら顔を近付けてくる。

だから、近いって…。


「それはアレだ。昨日、登録したばかりだから」

「あ……なるほど」

「それに、技量って言っても実戦経験はないからなぁ…」

「ふむ…そうなのか………」


どうやら納得してくれたみたいだな。


「んじゃ、俺は部屋に戻るから」

「あ!!待ってくれ!!!」

「ん?」

「名前を…名前を教えてくれないか?…………私は…私はシェラ。シェラ・ファーマイト」


「………ツキヤ」


俺は振り返らずにそう答えて部屋に向かった。




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