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貞操逆転世界になっていたので、幼馴染を色仕掛けで落としたい  作者: 138ネコ


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第64話「こら、栄太郎。ちゃんと勉強しないとダメでしょ」

―3人称視点―



 まだ残暑が残る10月。

 栄太郎はこの日、朝から西原の家に来ていた。

 当然だが、お家デートなどと言う甘い物ではない。


「栄太郎、流石にノートを取ってないのはダメでしょ!」


「いや、だって授業って何をノートに取れば良いか分からない事ないか?」


「それでも真っ白はないでしょ? せめて数式くらいはノート取っておきなさいよ」


「返す言葉もございません」


 ジト目で溜め息を吐く京に対し、素直に頭を下げる栄太郎。

 貞操観念が逆転した世界では、微妙に歴史が違う、それだけならまだしも現代文の意訳や、言葉の使い方も微妙に違っていたりする。

 最初の方はそれでもと頑張ってノートを取っていた栄太郎だったが、あまりの量にめんどくさくなり、段々とサボるようになった結果、全教科ノートを取らないまでに堕落してしまっていた。


 とはいえ、栄太郎がノートすら取らないのは、それだけが理由ではない。

 成績が下がれば、西原とテスト勉強をする口実が出来る。その為にあえて授業はまともに受けていないのだ。

 勉強する教科が増えれば増えるほど、西原と勉強する時間は相対的に増えていくので。


 だが、それを美味しいと思っているのは栄太郎だけではない。

 頭を下げる栄太郎の胸元をキッチリとロックオンする西原。軽い小言と愚痴を言いながらも、内心は栄太郎と勉強できる事を喜んでいた。

 勉強にかこつけて、スケベのチャンスが来るかもしれないと。


 栄太郎の胸元に、一瞬だけデレデレした表情を見せる西原だが、すぐに目線を逸らしキリっとした表情を作る。

 出来ればこのままガン見をし続けたいところではあるが、それをするには一つ問題があるからだ。


「あっ、実は私もノートあまりとってないかも。えへへ」


 そう、この場に大倉さんも居るからである。

 本当は栄太郎だけを誘うつもりだった西原。

 若い男女が二人きりの密室。しかも体育祭で胸を触らせてくれた相手。上手くいけばここでそれ以上の事が出来る。

 そんな妄想を膨らませ、数時間に及ぶ脳内の攻防をした結果送ったメッセージ。


『大倉さんも誘って、うちで勉強会しない?』


 スーパーヘタレである。

 2人きりで勉強と言うと、栄太郎に下心が見透かされそうだったので、大倉さんを誘ってしまったのだ。

 とはいえ、ここで大倉さんが「用事があるから無理」と言えば自然な成り行きで2人きりになれる。

 祈るような気持ちで大倉さんに声をかけた西原。勿論、そんな誘いに大倉さんが乗らないわけもなく、結局3人で勉強をする事に。


 しかも、悪い事は続くものである。

 西原の部屋に置かれた机、そこに座る栄太郎の隣を大倉さんがちゃっかりキープ中。

 栄太郎に教える目的なら、栄太郎の隣に座るのがベストだった。

 しかし、西原が教えるのは栄太郎だけではなく、大倉さんもである。

 すると、席は必然的に栄太郎と大倉さんが隣り合い、その対面に西原が座る事になる。2人同時に面倒を見るために。


「あっ、栄太郎君。これ分かる?」


「さっぱりわからん」


 今も西原の目の前でイチャイチャしながら、分からない談議に花を咲かせる栄太郎と大倉さん。

 別にイチャイチャしようとしているわけではない、勉強できる西原よりも、出来ない者同士の方がシンパシーを感じやすいからである。

 この単語、意味わからないよねとか、公式を代入するための公式が分からないなどと、楽しそうに会話し、西原が完全に蚊帳の外状態。


 普段の栄太郎なら、それでも西原に話しかける程度の配慮は出来る。栄太郎の本命は大倉さんではなく西原だから。

 だが、本命の西原を目の前にしても「あっ、ここ分かる?」と言って大倉さんが栄太郎の教科書を指さすたびに、栄太郎の腕に重量感のある胸が当たる。

 男というのは、女性の胸が腕に当たれば当たるほどIQが下がる悲しい生き物。大倉さんのおっぱいの前に、もはやなすすべがない状態。


 栄太郎が貞操観念が逆転した世界から来た事を知らない西原にとっては、何故栄太郎が大倉さんにデレデレしているのかよく分からない。

 良く分からないが、このままでは大倉さんに取られかねない事だけは分かる。

 しかし、ここで仲を裂くために「遊んでないでちゃんと勉強するよ」と言っても逆効果になりかねない。

 なので、西原が取った策、それは。


「こら、栄太郎。ちゃんと勉強しないとダメでしょ」


 西原が栄太郎の隣に座ると、少しだけ冷たい声でそう言って、栄太郎の頭を撫でる。

 最近男性向けの漫画で人気のシチェーション。強引女子に頭を撫でられながら注意されるである。


「えっ……あっ……」


 思いもよらぬ西原の行動に、言葉を失う栄太郎。


「分かった?」


 なおも頭を撫でながら、余裕の笑みを見せる西原。

 貞操観念が逆転した世界。この世界の男が喜ぶシチェーションは大抵栄太郎の心には響かない。


「は、はひ」


 だが、これは効果抜群だったようだ。

 栄太郎の心は今。完全に乙女になっていた。

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