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貞操逆転世界になっていたので、幼馴染を色仕掛けで落としたい  作者: 138ネコ


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第63話「へっへっへ、お嬢ちゃん、今なら10円玉2枚セットを100円で売るよ」

‐栄太郎視点‐


 文化祭も体育祭も終わり、教室はいつものムードに戻りつつ……なかった。

 貞操観念が逆転しようと、変わらない物がある。


 仲睦まじく、仲良く話す男女。

 男子生徒が話しをしながら、ごく自然に女子生徒の腕を取ると、胸を押し当てるように腕を絡め、それを見ていた教室の空気がいっぺんに変わる。

 口には出さないが、誰もが思う。こいつら出来てるなと。


 それは何も、彼らだけではない。

 うちの教室にももう1組、公言はしていないが明らかに付き合ってるムードを出している男女が居る。


 それは何もウチのクラスだけではない。

 京や大倉さん、クソ研の先輩たちからも話を聞くに、どこのクラスも同じような状況なのだと。


 学園祭という非日常により、数多の恋人が生まれる現象。

 文化祭マジック。甘酸っぱい(ときめき)青春の一ページ(メモリアル)ともいうか。

 これにより、学校内の至る所でカップルが成立していた。


 そんなカップルを、遠巻きに羨ましそうに見ているのはクラス一の下ネタ好きの女子と、その仲間たち。

 となると、どんな会話をするかは分からないが、どんな内容の会話をするのかは予想がつく。

 彼女たち以外はカップルに気を取られているおかげか、下ネタ好きの女子たちの声のトーンが上がっても誰も気にしない。

 声を気にしないおかげで、聞き耳を立てなくても会話が聞こえるのは俺としてはありがたい。

 さて、聞かせて貰おうか。キミ達の猥談とやらを。


「なぁなぁ、あいつらもうやったのかな」


「そりゃあ、やったに決まってるでしょ」


「やったって、どこまでよ」


「もちろん……」


 クラス一下ネタが好きな女子が、もう一人の女子の後ろに回ると胸を揉み始めた。

 女の子同士の乳繰り合い、何度見ても良いものだ。今回は汚い語録が飛び交わないから特に。

 そう思っていたら、ただ胸を触るだけではなく、乳首の位置を弄り始めた。


 もちろんブラの上からなので乳首を触れるわけではない。

 だが、そのしぐさだけでも十分すぎるほど見ごたえがある。


「ええのんか、ここがええのんか」


「もう、ちょっとやめてよぉ」


 ゲラゲラ笑いながら乳繰り合っていたが、クラス一下ネタ好きの女子が、不意に手を止める。

 彼女が唐突に手を止めた事で、女子たちは理解する。ここから始まるのだと。猥談が。


「知ってる?」


 手を止め、真顔でクラス一下ネタが好きな女子が語り始める。


「男の乳首って、感じるためだけにあるらしいよ」


 その言葉に、人目もはばからないような声量で女子たちが同時に「えっ!?」と声を出す。

 クラス一下ネタが好きな女子の周りだけではない、他にも盗み聞きしていただろう女子からも同じような声が上がった。


 なるほど。今日の議題はおっぱいか。

 真剣に話し始めるクラス一下ネタ好きな女子を見て、俺は必死に笑いを堪える。

 ――キミ達、まだその領域(レベル)なんだね――と。


 既におっぱい童貞を卒業した俺から見れば、彼女たちは滑稽にしか見えなかった。

 想像の中のおっぱいを熱く語り、男の乳首は感じるためだけにあるとかスケベな女子の妄想だとか。

 なんなら、俺の胸を触らせてやろうか? おっぱい処女ちゃんたち。


 もちろん、そんな事を口に出せるほど俺はコミュ力があるわけではない。

 先日、京に胸を触らせたのが精いっぱい。

 とはいえ、おっぱい童貞を卒業した上、おっぱい処女も卒業させたのだから俺の方が上だろう。


 彼女たちは将棋でいえば「歩」で、俺は「ト金」。

 たとえ、後一歩で成れるとしても、成らなければ「歩」は「歩」だ。

 全く、あまりのおこちゃまの会話に、やれやれだぜ。


 もちろん、下ネタは好きなので会話はこのまま盗み聞ぎさせてもらうけどな。


「ってか、男は乳首で感じるって言っても、どうやれば良いんだよ」


「10円玉を2枚、親指と人差し指で摘まんだら、回転させて3枚に見えるようにする訓練が良いって前にAV女優が言ってた」


「え、マジで!?」


 クラス一下ネタ好きな女子の言葉を聞き、女子たちが慌てて財布を取り出し、10円玉を見つけるとおもむろに親指と人差し指で回し始める。

 貞操観念が逆転する前の世界でも、お菓子みたいな名前のAV男優がそんな事言ってたな、性に関する内容だけ無駄にリンクするのなんなんだろうな。


「ねぇ、10円誰か貸して、それか両替して!」


「へっへっへ、お嬢ちゃん、今なら10円玉2枚セットを100円で売るよ」


「~~……買った!」


 買うのかよ!?

 このことを想定していたのか、クラス一下ネタが好きな女子の財布から10円玉が次々と売られていく。なんともまぁ阿漕な商売だことで。

 必死に10円玉を回し続ける女子たち。


 そんな輪に入らず、一人ドヤ顔で彼女たちを見下しているのはいつものイキリ女子。

 お決まりの「そういや前やった男が」のセリフを吐けば、当然のように周りから反感を買う。


「はぁ? お前処女じゃん?」


「しょしょしょしょ、処女ちゃうわ!」


 そして始まる処女検定。

 今回も訳の分からない自爆するんだろうけど、面白いから頑張れー。

 などと思っていたら、今回は空気が違っていた。


 処女検定~実技編~

 男を乳首でイカせるテクニックがある事を、10円玉2枚使って証明せよ。


 渡された10円玉を見てほくそ笑むイキリ女子。

 だが、渡された10円玉を指でつまむ事なく、そっと机の上に置く。

 その行為はサレンダー……かと思われた。


 イキリ女子をバカにしようとした女子たちだが、言葉を詰まらせる。

 いまだにイキリ女子の顔から笑みが消えていない事に不穏を感じ。


「こんなもの、必要ないよ」


「必要ないって、じゃあどうするの?」


 他の女子の代わりに、クラス一下ネタが好きな女子が、問いかける。

 10円玉は既に机の上に置かれている。この状態で男を乳首でイカせる証明は不可能と思われた。


「乳首に電動歯ブラシを当てれば、一瞬でイカせる事が出来る!」


「な、なんだってー!!!」


 えっ、電動歯ブラシ?

 大人のオモチャじゃなくて、電動歯ブラシ???


 流石にそれはねぇよと思っているが、女子たちは脂汗を額に浮かべ、唸っている。


「ジャッジ、今の判定は!?」


 もはや人目もはばからず、クラス一下ネタが好きな女子が大声で他の女子に判定を求める。  

 そして下された判決は。


「一本!」


 まさかの一本である。

 イキリ処女と思い込んでいた相手に、下ネタで負けたことが悔しかったのか、その場で膝をつき放心している。

 いや、お前負けてねぇから。


「カチッ、ウィーン」


 勝ち誇った女子は、エア電動歯ブラシを動かし勝利のポーズを決めている。

 おいおい、こんなトンチキ知識、マジで信じるのか?

 新たな下ネタクイーンとなったイキリ女子の周りに女子が集まり、どのメーカーの電動歯ブラシが良いか聞いてる辺り世も末だ。


 帰宅してから、家にあった電動歯ブラシを動かしてみた。

 キュイーンという、けたましい音と共に高速回転をする歯ブラシ。

 指でチョンと触るだけでもそこそこ痛い。こんなもの乳首に当てられたらモゲルっちゅうねん!!

読んで頂きありがとうございます!


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