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貞操逆転世界になっていたので、幼馴染を色仕掛けで落としたい  作者: 138ネコ


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第52話「ちょっと待った!」

‐3人称視点‐


「良いか、暑いからと言ってあまり開放的になるなよ。特に男子、女共は見てるからな、注意するんだぞ」


 教師の小言が終わると「起立、気を付け、礼」と学級委員が号令をし、一気に教室が騒がしくなる。

 教室のそこかしこから聞こえてくる話題は、まだまだ続く夏休みをどう過ごすか、宿題はどこまで終わったかばかり。

 特にクラスで仲の良い友人がいるわけではない栄太郎は、荷物をまとめ、席を立とうとして、少しだけ思いとどまる。

 

(交尾ごっこはもうしないのかな……)


 ちょっとだけ、そう、ほんのちょっとだけ、女子たちがまた交尾ごっこをしない期待していたので。

 残念ながら、栄太郎の希望とは裏腹に、女子たちは夏休みの計画を立てる事に夢中である。

 このままここにいても仕方がない。そう思い荷物をまとめた鞄を手に取ると、栄太郎は教室を後にした。


 教室を出た栄太郎が向かったのは、クソゲー研究部である。

 陸上部は3年生が引退し、インターハイが終わったばかりなので、部活は自主参加期間。

 それでも大体の部員は参加するが、自主参加なので京が無理に参加する必要はない。なので栄太郎もわざわざクソゲー研究部に顔を出す必要はない。

 が、今回部活に向かったのはそういった理由からではない。


「即売会の売り子の衣装が用意できたと聞きましたが」


 そう、栄太郎が本日クソゲー研究部に来たのは、先日頼まれた即売会の売り子。

 その衣装を確認のためである。

 少し遠慮気味の態度で部室に入ってきた栄太郎。

 部室にはまだ大倉さんは来ておらず、四谷と浜口がいつものように談笑をしているところだった。


 部室に入ってきた栄太郎に対し、少しだけキョドり気味の四谷と浜口。

 やや鈍感なところがある栄太郎だが、先輩2人がキョドり気味な理由については何となく察していた。きっと売り子の衣装がスケベな感じなのだろうなと。

 彼女たちのまるで童貞臭い反応に、少しだけ親近感を覚えるのは、栄太郎もまごう事なき童貞だからだろう。


「いや、それなんだけどさ……」


 ガタイが良く、男の栄太郎と比べても一回り以上大きな体をしている四谷が、今は申し訳なさそうに眉を下げ、体が小さく見えそうな程にもじもじしながら壁を指さす。

 四谷が指さした先には、ハンガーにかけられた上下の衣装。

 全体的にダボダボで、ふとももまでありそうなロングTシャツと、黒のスパッツである。


 あっけに取られる栄太郎。

 応援団の時みたいな露出の激しい衣装を想像していたのだが、思った以上に露出がなかったので。

 別にこれくらいなら気にするような物でもない。


 この程度で、そこまで申し訳なさそうにするかと思う栄太郎だが、シャツを見て少し考えを改める。

 ダボダボな上に大きめに作られた首周りは、下手をすれば片方の肩が出てしまうくらい。これでは同人誌を渡したりする時や、ちょっとした事で胸元が見えるだろう。

 下手をすれば、乳首が見えるかもしれない。


 栄太郎も、これを元の世界の女子に着て欲しいと頼むのは、確かに敷居が高いなと理解出来る。

 それと同時に、感動もしていた。露出度を上げるためには布面積を減らす事ばかり考えていた栄太郎だが、あえて増やす事により露出度を上げられるその発想に。

 ちょっと大きめの服買っちゃってさ。そんな言い訳一つで、京への色仕掛けを自然に行えるのだ。これぞ現代版『北風と太陽』だろう。


「全然良いですよ!」


 笑顔でハキハキと答える栄太郎。

 用意して貰った衣装を着るのは元から問題ない。

 だが、大事なことを気づかせてくれた先輩たちへの恩返しになるなら喜んでと、笑顔で返事をしたのだ。


 もちろん、そんな栄太郎の気持ちを四谷も浜口が知る由もない。

 彼女たちの目には、栄太郎がオタクちゃんの出したオタクっぽい衣装を「これ良いじゃん」と言いながら笑顔で返してくれる、オタクちゃんに優しいギャル男として映っている。

 それぞれがWIN-WINの関係で、話が終わろうかとしている時だった。


「ちょっと待った!」


 バンと勢いよく部室のドアを開けて「ちょっと待ったコール」をかけたのは大倉さんである。

 部室にズカズカと入ってきて、キッと先輩を一睨みすると、衣装を指さす。


「あっ、この衣装、しゃがんだり前かがみすると島田君の胸とか見えたりしませんか!?」


(私が……私が島田君を守護らねば)


「流石にそんな格好させたら、島田君が会場の女の子からエッチな目でジロジロ見られて不快に感じると思うんですけど!」


 今まで散々スケベな目で見ておきながら、栄太郎に対し恋心に気づいた事により栄太郎の騎士と化した大倉さん。

 どの口が言う。

 栄太郎も四谷浜口も、今までの大倉さんの行動に対し心の中でそう反論するが、口には出せないでいた。

 言ってる事はごもっともなので。


 言いたい事は色々あるが、あまりの正論に「ぐぬぬ」と呻き何も言い返せない四谷と浜口。

 勝利を確信した大倉さんが、口角を上げた時だった。

 

「ちょっと待った!」


 バンと勢いよく部室のドアを開けて「ちょっと待ったコール」をかけたのは西原である。

 予想外の人物の乱入に、全員が固まっていた。

 堂々と部室の中へ入り、西原が衣装を指さす。


「私は栄太郎が着た姿を見たい!」


 栄太郎の騎士と化した大倉さんに対し、宣戦布告をするように西原が立ちはだかった。

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