第51話「イキスギィ!」
‐栄太郎視点‐
夏休みにいらないものは何か?
学生に聞けば皆が口をそろえて言うだろう。宿題と登校日だと。
今日はその登校日、せっかくの夏休みだというのにクソ暑い中、わざわざ学校へ行かなければならない。あー、やだやだ。
そんな風に思っていた時期が俺にもありました。
なんやかんや言いながらも、登校すれば仲の良い友達と楽しくおしゃべりができる。
まぁ、俺にはそんな相手いませんけどね(半ギレ)。
では何故考え方を改めることが出来たのか?
それは教壇の近くの席に集まった女子たちが理由だ。
2人組の女子、片方が後ろから抱き着き腰をカクカクさせ、それを周りの女子が爆笑しながら見ている。
彼女たちがやっているのはそう、いわゆる交尾ごっこである!
「何してんすか! やめてくださいよホントに!」
「暴れるなよ……暴れるなよ……」
そんな言葉とは裏腹に、交尾ごっこをしている女子たちはゲラゲラ笑っている。勿論それを見ている女子たちも。
どこかで聞いた事がある汚いセリフが若干気になるものの、俺は彼女たちの交尾ごっこに目が離せないでいた。
貞操が逆転する前の世界では男同士で交尾ごっこをやっているのを見た事はある。
もしかしたら、貞操観念が逆転したこの世界では女子たちが交尾ごっこをするのではと期待していたが、それを見る事はなかった。今日の今までは!
女の子がキャッキャフッフと笑いながら腰を振って遊ぶ。あぁ、なんてすばらしい光景なんだ。
「イキスギィ!」
くっそ、せっかくの楽しい女の子同士の交尾ごっこだというのに、さっきからなんで汚い語録が飛び交ってるんだよ!!
もしかしてあれか? この世界にもあるのか? 淫夢語録が!
あるんだろうな(呆れ)。
なおも女子たちの口から飛び交う淫夢語録。そんな女子たちを男子は、いや男子だけではなく、輪に居ない女子も冷ややかな目で見ている。
淫夢語録は恥ずかしいコンテンツだという事は、貞操観念が逆転したとしても共通事項のようだ。交尾ごっこをしてる女子の周り以外はバッチェ冷えている。
っといかん。俺の脳内まで淫夢語録が浸透してきている。淫夢は感染する。はっきりわかんだね。
なおも繰り広げられる交尾ごっこだが、どうしても淫夢語録が飛び交うせいでイマイチ集中が出来ない。
女子たちがやっているという事は、この世界の野獣先輩は女の子。野獣先輩女の子説が証明されちまったなァ? とか。
それぞれの世界線に合わせた野獣先輩がいる、野獣先輩パラレルワールド説とか。
なんで女子がくんずほぐれつしてるのを、見ながら野獣先輩の事を考えないといけないんだ(困惑)。
女子たちの淫夢語録交尾ごっこは、予鈴の鐘が鳴るまで響いた。
女子同士が胸を揉んだり腰を振ったりと興奮する要素しかないはずなのに、淫夢語録のせいで、俺の心はバッチェ……じゃなくどこか冷めてしまっていた。
出来れば今度は普通に交尾ごっこをしてくれませんかね?
ちなみに交尾ごっこの輪の中に、いつもの下ネタ好きな女子は居た。
一緒に居る女子たちはゲラゲラ笑っているというのに、オロオロした様子で周りの目を気にして苦笑いを浮かべ。
どうやら人前でオープンにスケベ話をするのは苦手な、大倉さんタイプなのだろう。
まぁ、周りからしたらバレバレなんですがそれは。




