最弱の勇者、最強の魔王を倒す
「もう無理だ……これ以上、戦えない……」
ボロボロになった鎧を身に纏い、へたり込む一人の青年がいた。彼の名前はリック。この世界の人々から『最弱の勇者』と呼ばれている存在だ。
10年前、魔王が現れ、世界中が恐怖に包まれた。人々は勇者の誕生を待ち望んでいた。そんな中、リックは神殿で『勇者の紋章』を授かる。しかし、その力は微弱で、到底魔王に敵うものではなかった。
それでもリックは諦めなかった。仲間を集め、魔王討伐の旅に出る。幾多の苦難を乗り越え、今、ようやく魔王城へとたどり着いた。だが、最後の砦である魔王との戦いで、仲間たちは次々と倒れていき……。
「みんな……ごめん……。僕は本当に最弱の勇者だった……」
リックは涙を流しながら、立ち上がる。最後まで諦めず、魔王に立ち向かうために。
魔王城の玉座の間に乗り込むリック。そこで待ち構えていたのは、漆黒の鎧に身を包んだ魔王ヴァルファ。
「おお、情けない勇者よ。よくぞここまで辿り着いた。だが、もはや無駄だ。貴様に、我が力に抗うすべはない……」
ヴァルファが不敵な笑みを浮かべる。リックは剣を構えるが、全身傷だらけで、もはや精根尽き果てていた。
「僕は……最後まで、諦めない……!」
リックが剣を振るう。だがその刹那、ヴァルファの放った一撃が、リックの身体を貫いた。
「愚かな……。我が前に、小者が刃向かう愚かさを思い知るがいい」
倒れ伏すリック。意識が遠のく中、かつて仲間たちと過ごした日々が走馬灯のように蘇る。
(みんな……ごめん……。最後まで、僕は無力だった……)
リックの瞳から、光が消えた。これまで。勇者は、敗れたのだ。
だが、その時――。
「諦めるな、リック……! 私たちの想いを胸に、立ち上がるのだ……!」
突如、リックの脳裏に、消えた仲間たちの声が響く。
「そうだ、お前は最弱の勇者なんかじゃない! お前は、私たちをここまで導いてくれた、最強の勇者なんだ!」
「リック、あなたを信じています! 世界を、私たちの未来を託します!」
仲間たちの声が、リックに力を与える。
「……みんな」
リックは立ち上がる。傷だらけの身体に、あらん限りの力を込めて。
「愚か者め……まだ立ち上がるか。何度でも、打ち倒してくれる……!」
ヴァルファが再び、リックに向かって斬撃を放つ。しかし、その刹那――
「僕は……世界を守る、最強の勇者だ――ッ!」
リックの身体が、眩い光に包まれる。勇者の紋章が、真の力を発動させたのだ。
かつてない速さで、リックはヴァルファに斬りかかる。魔王の放つ魔力をものともせず、懐に飛び込み、渾身の一撃を叩き込む。
「ば……バカな……! 我が魔力が……勇者の力に……負けただと……?」
光に貫かれ、ヴァルファは崩れ落ちる。そして、リックに倒された。
魔王城が崩壊し、辺りが光に包まれる中、リックは空を仰ぐ。
「みんな……世界を、守ることができたよ……」
こうして、最弱と呼ばれた勇者は、仲間の想いを胸に最強の魔王を打ち倒した。長い戦いの末に、世界に平和が訪れるのだった。
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