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女勇者の禁書覚書20

 この新聞の記事を見たとき、母がそのことを知っていることにより愕然とした。自分はひょっとしたら世紀の発見をしたのではないかとかなり期待したものだった。


 そんな淡い期待はかき消され、現実を突き詰められてしまった。 


 その時は軽い衝撃を受けたが、すぐに世の中そんなに甘いものではないと感じた。


 そりゃ、そうだ。そんなことで新聞に載るくらいならだれかがとっくに公表しているに違いなかった。


 一階へ続く階段を下りながら、コーヒーに牛乳を入れるか迷っていた。入れると味がまろやかになりいかにもコーヒー牛乳になる。入れないとコーヒーの味自体をのを味わえる。だが、においがなくなってしまうので入れたくはない。苦いのを消すためによく入れていた。しかしそのままのものが嫌いというわけではない。これはこれで私は好きだ。最初、この飲み物の味が苦くて何がおいしくて両親が飲むのがわからなかったが、親の真似して眠気覚ましに効くことに気づいてからは大人と同様によく飲んでいた。


 私も今ではそうだが、おいしいからではなく、朝なら間違いなく眠気覚ましになるのは予期できた。では昼はどうか?

 

 それはもちろん言うまでもないことだろう。


 一階の台所の棚に置いてある場所に手を伸ばして、蓋は大きい肉厚のコルク栓でできていて、全体がまだ青く竹でできている、やや太めのコーヒーいれを手にすると、コルク栓に手をかけ引っこ抜くとポンといい音とともに中のこおばしい独特のにおいをかいだ。


 少しの間、入れ物に鼻を近づけて、その珍しい香りをかいでいた。 


 いーいにおい、これ、好きかも。少しうっとりしそうな匂いだった。


 入れ物の容器を片手に持ち、もう片方で蓋を再び閉める開けてみる。


 少しだけポンの音が聞こえて・・それを何度か繰り返して納得するものがあった。コルク栓は私にとっては物珍しいものであり、聞いたこともない音だった。


 台所・・それは炊事場であり、コメはもちろん、たまに麦も焚きかまどで炊く。 


 かまどのある場所は土間になっていて、踏み固められた土があって少しだけ湿り気を持っている。たまに母親がたらいを持ち、土間に水をかけていることを何度か見たことがあった。庭に通じるスライド式材木ドアは以外にもがっちりしていて肉厚だった。


 一方、煮物や焼き物をするときにはかまどでは大きすぎるためにほかの場所で家事などをする。同じ炊事場でも土間と少し高くなっている場所とがあり、そこで履き物を脱いで家の中へと続く部屋、つまり台所がある。台所に一つ、土間に二つ窓があり、土間の窓はいまだに材木でできた格子だ。格子は横にならべてはめられていて、さらに左右に滑り方式の窓を全開にすると風通しのよさそうになるのだった。台所のほうは窓ガラスであり、明るい。私はこの場所での特に、冬にここに来るのが嫌だった。ここは寒くて少し暗くて、そんな印象がこの時には出来上がっていた。それでも台所が窓ガラスになってからは明るくなって、それほどでもなくなってきていた。


 台所の火種はこの都市から少し離れたとこから湧き出てくるガスであった。 


 それをそのまま金属製の一抱えあるぐらいの円筒形の、実際に持ったことはないが結構重そうなガス缶に詰め込んで、火種の下に置きコンロと出入れぐちを管でつないでいるが、それはあめ色をした、少し厚そうな何でできているかわからないような物質だった。その管を触ってみると、見た目よりずっと柔らかい。ブニブニしていた。管の端と端は金属製の今は見た目はだいぶ腐蝕しているクリップで止められていて、中のガスが漏れないようにしてあるのだった。


 銅製の少しくすんだ色のやかんに井戸からくみ上げておいた、小ぶりなたらいの水を入れていく。やかんに半分ぐらいまで入れて、蓋を閉めようとするが開けるときもだが、なかなか外しにくいし、入れにくいときたので、てこずって力を入れすぎたのかすっぽりと入った。そしてコンロの上に置く。 


私はコーヒーの入れ物を灰色と白い石材でできた洗い場の隣の場所に置き、コンロの元栓を開くにしてガスをコンロ内に引き入れて、コンロに火をつける。


「バチバチ、バチバチ」と火花が数回飛びコンロに火が付く。


 きれい、何度か見てきている光景だがまだ飽きることのない、赤でもない、黄色でもない、この薄い半透明な青の火は見慣れないため新鮮に見える。


 赤や黄色のほのうはよく秋から冬にかけてみる、焚き火の火だ。

  

 やかんの水が熱湯になるまで食器たんすを見ていく。材木食器たんすも一部を除き、窓はすべてガラス製であり、中のものが丸見えでどこに何があるか一目瞭然だったので改めてみていくと以前よりガラス瓶が増えたようだった。その中に一つの中身に目が行った。その瓶の中には白い豆のようなものが口いっぱいまで詰めてあり、瓶の蓋として、コルク栓がしてあった。


 コーヒーを飲み始めたころの、比較的、最近の母とのやり取りを思い出していた。


 確か・・・この豆はコーヒー豆だったはず・・。


 あまりその時は聞いていなかったのか、思い出すのに少し時間がかかった。


 確か・・竹筒に入った豆がなくなったら、この白い豆を炒って使ってと言っていた。


 コンロにかけたやかんを見ると、まだ沸騰はしていない。


 経験から言うと、この数分間ではまだ少しだけ温度が上昇してきたころだろうと推測できた。


 さっきの白い豆が入っているたんすの段に手を伸ばして、スライド式ドアを開けて、中から白豆の瓶を手に取ると、一度様子見をかねてにおいをかいでみるが何も漂ってこない。


 軽く瓶を振ってみる。さらさらと少し湿り気があるような音がした。


 ふたを開けて中の香りを見てみると、少し酸っぱいような、青臭い香りが鼻を刺激した。


 なにこれ?本当にコーヒー?


 知識はあっても、実際は見たことすらなかったので驚いた。


 瓶を傾けて中の豆を数粒、取り出してみる。 


 手の中にある白いものを鼻に近づけて、近距離からにおいをかいでみると生葉のようなにおいがさらに少し強くなったようだった。


 手の中で軽く振ってみると完全には乾燥していないように見えた。


 白いことを除けば大豆にそっくりだった。


 ひょっとすると、大豆も炒ってみればコーヒーのようになるかもしれないと頭をかすめるものがあった。


 それほど良く豆の形が似ていた。


 私はここは思案のしどころかなーと考えていた。そのまま竹筒の中身を使うか、いや、ここは豆を炒って、実際にコーヒーになる過程も見るべきかと真剣に考えていた。


 悩んでいることさらに刻々と時は流れていく・・。その考えは最終結果を出さないままやかんのお湯はぼこぼことにだっていた。


 ガスコンロを止めるとにだっているのがすぐに収まり、やかんのくちから湯気が出てきていた。


 かなり熱いだろう。猫舌にはきついがこれはそうでなくても、すぐに飲んだら舌がやけどするだろうと思った。


 まだ、悩んでいた。どっちにすべきか・・・そのまま使うか、最初からやるということで白豆を炒ってコーヒーにすべきか・・答えは一からやってみるべきだと決まったのだった。何のことはない。ただ、この白豆が本当にコーヒー豆になるのか確かめてみたかった。その過程も、とても興味がありワクワクしていた。


 やかんのお湯のガスを止めたことを確認して、いつもよく見る黒い丸いフライパンを探すまでもなく目に入り、それを手にしてもう一つあるガス台の上にフライパンを置いた。


 白い豆の入った瓶を手にして、フライパンの上にこんもりするぐらいに開けた後、軽くフライパンをゆすり平らにする。


 ガスコンロに炎を点火するためにコンロにある開閉弁を開けるように回し口をひねる。


 カチカチと音がしてコンロに火が付く。炎の勢いが強いと感じて開閉弁を閉める方向にやると火の勢いが弱まり、焦げるのを防いでくれる。


 まずは豆にわずかに残った水分を飛ばすようにゆっくりフライパンを動かしながら、同時に豆の焦げ具合を見ていく。


 母が言っていたことを思い出しながら炎の調節の加減を進めていく。


 ああ、確か・・この豆の焦げ具合で味が変わるとか言いていたような・・。


 一体、どんな味になるのだろうとかなり興味津々で楽しかった。


 でも、不安もある。まずいものだったらどうしようと・・。


 もし、そうなってしまったら母に泣きついて代わりにやってもらおうと考えてもいた。


 「はあー」


 短いため息が出る。こんなことだったらもっと料理を手伝っておけばよかったなといまさらになって考えてもしまう。


 私よりも妹のほうがうまくなったりして・・・。


 あの子のほうは母にべってりだし、甘えん坊のところもあるし、姉である私が・・・。


 「はあ」


 「やっぱり覚えないとだめかなあ」


 独り言は口から洩れていた。私って結構、ものぐさだなー


 料理を一度も手伝ったことがないではない。たまに母のことは手伝うし、料理も簡単なのはやったりする。


 野菜を切ったり、母に言われたとおりに計量スプーンで味をつけたり・・。母は計量スプーンなんて使っているのを見たことがなかったが・・。


 母は私に最初はきちんと計量スプーンを使ったほうが早いのよと言っていたが何が早いのかは言わなかった。


 なので聞き返したことがあった。


 「熟達」


 母はそう言っていた。そのことが頭ではわからない年ではないが経験が足りないため、いまひとつ合点がいかないわかりにくいものだった。


 つまり計量スプーンを使えばうまくなることまでは理解しているが計量スプーンでなくても、その都度味見をしていけばわかるようになってくるのではないかと考えていたからであった。


 いわれたころには母の言葉を無視して味見で済ませたりしていたが、いつのころか計量スプーンで測り入れるようになっていた。


 決して母に強く言われたとか、味がまずいといわれてしょげたとかではなかった。あくまで自発的にであった。


 母は最初から強火でといっていた様だったが・・。


 私は母の言うことを聞かずにまずは弱火で豆を炒った。


 いくらたっても白いままなのでなるほどと感心しながら強火にして様子を見る。


 それでもすぐというわけではなさそうだった。


「ここは思案のしどころじゃのう」


 呟いてみた。


 もちろんあたりには誰もいない。


 このままいままで通りの焦げ具合でよいのか、いや、違う味も見てみたという欲求もあり、違う焦げ具合で見てみるべきかと・・でも失敗はしたくないし・・失敗したら妹にでも変わった味としてのませてみるかな・・。


「ふふふ」


 うっすらと笑うその声には何かしらの楽しみが含まれていた。


 あいつ、どんな顔するだろうそう考えると面白くてならなかった。


「ふふふ」


 ついつい、また笑ってしまう。


 その笑い声は以外にもわずかながら家の中にこだましていた。


 その間に白い豆は、私には大豆の豆というよりはなんだか麦の豆、種というかそちらに似ていると強く感じていた。


 どんどん、豆は焦げ目がついていきにおいもどんどんそれにまして私の知っているものになっていく。


 茶色からこげ茶へ、こげ茶から真っ黒へ変色する手前で恐ろしくなって止めてしまった。


 ある意味あっている。いつも通りの色だった。なんだか少し薄いようにも見えるが・・。


 私はフライパンの中の豆の中で一番色の薄い茶色ぐらいのものを手に取るが熱くてフライパンの中に落としてしまい、手を振る。


「あっちー」


 豆が小さいからと油断していた。水を沸かしてお湯にするために用意した盥の水は半分くらいは残っており、そこに豆を持った人差し指をまず先につけて、それから手全体を水の中に入れた。


 しくったそう思わずにはいられなかった。火傷したら数日はひりひり痛いことは身にしみてわかっていた。だからなるべくはそうならないように気を付けてきたはずであった。






























 

































 








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