死にたいと殺したくない
はい、前回 ヴィヴォが 周りから隠れながら商店街通りを駆け抜けたわけなんですが 街に設置されていたカメラに見つかってしまい 武装警察署の方々が動き出しました。
この後 ヴィヴォがどうなってしまうのか ヴィヴォの内面も気になりますね!
そして 現場に向かったアイミは?
第3部 ご覧下さい。どうぞ!
ヴィヴォは 商店街通りを出てすぐ大きな噴水の前で立ち止まった。
ベンチを前にたたずむヴィヴォ
(アイミはどうしているだろうか 僕の事嫌いになってるんだろうな ハハッ...)
ヴィヴォは左胸に手をあて ベンチで初めてアイミに話しかけた時の事を思い出し 悔し笑をした。
(あの時 アイミに話しかけていなければ あんな想いさせずに済んだし こんな事になっていなかったのに...でも 僕を見た時のアイミの顔は 悪い気はしなかった...むしろ 嬉しくもあった...ゴメンよアイミ...)
ヴィヴォは噴き上がる水の上を見て うっすら涙を流した。
ズドォーーーーーーーーーーーーン
突然ヴィヴォの後ろにミサイルが飛んできて爆発した。
ヴィヴォは驚きながらも軽快に噴水の池の縁に飛び乗った。
(なんだ!?)
「特殊危険生物01番 ヴィヴォ ようやく見つけたぞ!!無駄な抵抗はやめて大人しく捕まれ!!」
武装警察の戦闘課の オールバックヘアーにチェック型の髭が2本生えたガタイのいい男が 自分より3倍くらいデカイ大砲を担いで 大声をあげた。
「マルクス第3隊長速いですぅ〜。よくそんなにデカイもん持ったまま 立ち回れますね...」
細身で お団子ヘアー前髪センター分けの ツンとした顔をした小柄な女性隊員が 後からやってきた
「だらしないぞ!ラース隊員!ちゃんと鍛えていれば このくらい 武装スーツで何倍にも膨れ上がった筋肉と相まって 鉛筆のように軽々扱えるようになるぞ!」
武装警察署 戦闘課 第3隊長マルクス=ゴウキン(男性)と 同じく戦闘課 第3隊所属隊員 ラース=トマス(女性)の2人である。
ヴィヴォは突然の事に戸惑ったが 動揺しながらも出来るだけ冷静に話出した。
「僕は 今は誰にも危害を加えていません。そ、そりゃ指名手配はされています。で、ですが 正体がバレないように 騒ぎにならないように 頭に頭巾を被って覆っていました...何故僕だとわかったんです??」
マルクスは眉間にシワを寄せて答えた
「お前は 10年前の事件の帳簿に記されてる通りであれば 最初は子供のように相手に抵抗していたが 突然相手に襲いかかり 身体全体で覆うように喰らったとある。誰にも危害を加えようとしていなくても 急にまた誰かを襲うやもしれん!だから 身柄を確保しに来た!それにだ!」
マルクスは 軽く嘲笑いながら続けた
「そんな頭巾で頭を覆っても無駄なんだよ!お前は人間の様な身体になったとはいえ 中身は人形だから理解出来んと思うが現代の監視カメラは 1度見た奴の特徴を数点記憶すりゃあ どんな格好してようが どれだけ歳をとろうが すーぐ見つけやがる。優れものだろう?」
「待ってくれ!カメラがスゴイのはわかった。でも 僕は10年前も今も何もやってないんだ!!」
ヴィヴォの言葉にマルクスもラースも疑問を覚えた。
「おかしいではないか!!何もしてないのに 人1人死ぬなんてそんな事あるわけが無い!それに その姿になったのが何よりの証拠でしょ!」
ラースは耐えきれず 構えをとり喧嘩ごしになる。
「待てラース隊員。勝てる確信のない相手に対してあまり挑発するな。無駄死にするぞ。」
マルクスは冷静にラースを制止した。
「し、しかし!」
煮え切らないラース
するとマルクスがこう切り出した
「正直ワシはラース隊員の言っている事は否定出来んのだが ヴィヴォよ1度説明してはもらえないか?納得いく様に説明してくれ。お前に猶予を与える。」
「いいのですかマルクス第3隊長?」
「うぬ!危険と判断した場合 即刻仕留める」
「ぐぐ、わかりました」
ラースは1度構えを解いた
ヴィヴォは深呼吸をし 話始めた
「確かに僕は10年前 ひとりの男を結果的には食い殺しました。最初僕は 彼に焼却炉で燃やされそうになり抵抗しました。彼の娘が飛び出してきて それを止めようとしましたが 僕の中で 過去にされた事によるトラウマが 心を蝕んでいき 僕は彼に抵抗するのを辞めました。僕は元々死にたかったので 死ねるならそれでいいや...って思って」
ヴィヴォの話を聞きながら目を瞑り しかめるマルクス ラースは複雑な気持ちで変な汗をかいている
「彼は斧を振り下ろし僕の頭と身体は2つに別れました。その時から僕は違和感を覚えたんです」
「違和感?だと?」
「僕の身体の中に 眼の様な光が2つあって『生きたい』とひたすらに言ってたんです。本当です!その後 僕の身体を彼が斧で砕き続けて 気がついたら こんな姿になってて...」
3人の間になんとも言えない空気が漂う。
するとマルクスが口を開く
「それは要するに ヴィヴォの身体にもう1人何かがいると?そういう事か?そうだとしたら 今もその身体に そいつがいる。という事になる。」
「マルクス第3隊長!こいつの話を信じるんですか!?」
「ラース隊員よ。当然の反応だな!しかし 人外の生態は確かに人間には 理解し難い事が多い。頭ごなしに信じないのも ワシはスッキリせんのだ。」
「し、しかし...」
2人のやりとりを聴きヴィヴォが口を開く
「ラースさんのお気持ちはわかります。ですが、僕も アイツの正体がなんなのか知りたくて いつまたアイツが動き出すのか 怖くて ホントはあまり人と関わりたくないんだ。」
「だがな ヴィヴォ 人1人死んでるのは事実なのだ。どの道 お前を捕えなくてはいけない事に変わりはない。悪く思わんでくれ。」
「・・・」
ヴィヴォは 不服そうな顔をした。
「僕は死にたいと思っているので 捕らえたあとどう壊しても構いませんが。その代わりちゃんと殺してください。」
「なんで人を殺すのがいけないことなの?僕に害を成す輩は死んで当然。そんなヤツら片っ端から殺して僕は幸せに生きていくんだ」
「なん!!!!だと!!!」
ラースはブチ切れた
「待ってください!!今のは僕ではなくて...!!」
ヴィヴォは言い返したしかし
「ふざけるな!!!お前の声だっただろうが!!!結局人を殺した奴ってのは 根性ねじ曲がってんだよ!!アタシがアンタをぶち壊して ご希望通り死なせてやるよ!!! 」
「ラース隊員!!待て!!」
マルクスは止めようとしたが間に合わなかった
ラースは2本のデカイ包丁を背中に背負っている鞘から抜き ヴィヴォに襲いかかった。
ラースは力が他の隊員に比べたら弱い方だが 動きや武器を振るスピードが ズバ抜けて速く 力の弱さをカバー出来ている。
「ラースさん!やめてください!!」
ヴィヴォは 言葉とはうらはらに 両手でラースの攻撃を防いだり弾いたり 素早く交わしたり 戦闘モードと化していく。
「お前!死にたいわりには往生際が悪くないか???死ぬのが怖くなったのか????」
ラースは攻撃の手を緩めず挑発をした
「だから 違うんです!!君が今戦っているのは僕ではなく 僕の身体なんですよ!下手したら君が死にますよ!!」
「アタシが弱いって言いてぇのか貴様は!!!デタラメばっかり言ってる貴様の様な外道に負けるわけにはいかねぇんだよ!!」
1歩も引かないラースに ヴィヴォは泣き始め
「僕は...!あなたを殺したくない...!!」
「...お前...!今なんと...」
ヴィヴォのまさかの言葉に ラースはヴィヴォを弾き距離をとった。
「僕は誰も殺しなくない。だから 指名手配になったその日から 頭を覆い身を隠していた。死にたいけど 殺すのは嫌だ。...嫌だ」
ラースは調子がくるい 一旦落ち着いた。
「思ったんだがよ。死にてぇなら 指名手配犯だってバレた方が すぐに殺して貰えたんじゃないか?」
当然の疑問だが ヴィヴォは
「周りにバレて 僕を捕らえようとした人達を 殺してしまうかもって思ったら 顔なんか晒せなくて...」
「あーーーーーー!!!なんかしゃらくせぇ!!!」
ラースはめんどうくさくなった。
「なんかもう よくわかんなねぇや!!!とりあえず死にたいんだろ!! じゃあ アタシが殺す!お前が死ぬ!!それで解決!!これでいいな?!」
ヴィヴォは 単純な答えに素直に納得出来なかったが とりあえず頷いた。
「いくぞ?」
ラースは構え直した。
「ラースさん 絶対に死なないでくださいよ!」
ヴィヴォは 不安でしかない
「だーれが死ぬか!」
ラースは勢い良く飛び出し 先程より冷静に立ち回る
「また僕を殺そうとするのかい?」
「うるっせえな!!死にたいって言うから殺してやろうとしてんだこっちは!黙ってろ!」
ラースに『何か』が語りかけるが ラースは手を止めない。
何度も正面から斬りかかるラース。
それを全て防ぎ弾くヴィヴォ。
先程と戦況はなんら変わっていないように思えた
しかし ラースはタイミングを伺っていた。
ラースは隙を見て左の包丁で右から横に斬りかかった。
すると ヴィヴォは両手で左の包丁を受け止めた
その後ラースはその包丁から手を放しヴィヴォの手に左手を付き 右手で包丁を振り下ろした。
ヴィヴォの両腕は切り落とされ 片方の包丁と同時に地に落ちた。
「アタシをなめんなよ?」
再び落ちていた包丁を手に取り 何も防げなくなったヴィヴォに再び斬りかかった。
「やめてよ。僕を殺さないで」
ラースは切り落としたはずの両手に足を捕まれ地面に身体を強く打ち付けられた。
(なんでだ?腕は切り落としたのに なぜ?身体から離れているのに何故?...ぐっ...)
ラースは信じられない物を目にした。
「なんだよそれ...!」
「死にたくない...生きたい...殺さないで...死にたくない...生きたい...殺さないで...」
何度も同じ言葉が繰り返される。
(切り落とした腕と 身体の間が...黒い粉で繋がってる??なんだありゃ 気持ちわりぃ)
「ラースさん だから戦うのは止めたんです!
今の僕では 自分で死ぬ方法すらわからないんです!これを止める方法もわかりません...ごめんなさい...ごめんなさい...ごめんなさい...」
ヴィヴォは病み始めた。
(10年前のあの時と一緒だ。また 人を殺してしまう。)
「うぐぅ...!!!!あぁ...!!」
ヴィヴォの腕が ラースの両足をグッと掴んだまま左右に開き始めた...!
「これはダメだ!!!」
マルクスは焦って大砲を構えた。しかし
「ダメだ このまま撃ったらラース隊員まで撃ち殺してしまうやもしれん...どうすれば!?」
ズビューーーーーン
ラースの足を掴んでいた腕を 横から黒い球体のようなビームが粉砕した。
先端から煙がたった大槍を下ろし アイミがヴィヴォを見つめている
「久しぶり 10年ぶりにやっと会えた...。ヴィヴォ 元気そうね。」
ラースは急いで這いつくばるようにヴィヴォから 離れ距離をとった。
「アイミ上官...無様なところをお見せして申し訳ありません...!」
ラースは膝をつき頭を下げた
ヴィヴォは 呆然として 身体の力が抜け ただただ立ち尽くした。
「...アイミ なんでここに...こんな格好で...大きくなったな...会いたくなかったな...」
そのまま ヴィヴォは死んだように 気を失って倒れた。
(いつでも寝なかったヴィヴォが 気を失うなんて 身体の中で何が変わったの?少しづつ人間に近づいていってるってこと??)
「アイミ上官 こやつはどうします?」
ラースが問う
「私が1人で持ち帰るから あなた達は先に戻っていてちょうだい!」
「大丈夫なんですか???危ないですよ!!」
「大丈夫!私には何もしてこないと思うから」
「・・・わかりました」
心配そうなラース
「帰るぞ!ラース!!」
遠くからマルクスの声
「はい!今行きます!!では これで アタシは失礼します!」
アイミに一礼すると ラースはマルクスの方へ走っていった。
「置いてかないでくださいよ!マルクス第3隊長〜!」
アイミは ヴィヴォを少しの間見つめ 右肩に抱えて武装警察署に向かった。
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「なぁラース隊員。あのヴィヴォとかいう人形...どう思う」
マルクスはラースに問いた
「戦って思ったのですが あれは悪いやつでは無いのかも知れませんね。」
ラースがそう答えると
「いや それはワシもそう思うのだが あの腕を落とした後に ヴィヴォから出てきたあの黒い接合体。あれがなんなのか気になってな」
「あれは アタシには 粉が固まって動いてるように見えました。なんというか 木屑に近い素材といいますか......ヴィヴォの人形の姿の時の素材なんですかね?10年前の事件の時に ダイン=ドールドゥを覆ったのも 確か 砕いたヴィヴォの身体の残骸って聞いてますし。」
「どれ!署に帰ったら 他の隊長達と情報共有して 色々調べてみるとしよう!」
「そうですね!」
マルクスとラースは急いで武装警察署に戻った。
どうでしたか??
ヴィヴォの複雑すぎる状況と複雑すぎる心情が 周りの状況も複雑にしてしまい大変でしたね。
そして最後にアイミが ヴィヴォを止め 持ち帰ったんですけど その後どうなるのか。
第4部楽しみに待っていてください!それではアデュー