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落ちこぼれ魔法使いコート  作者: アールR
8/8

(8)ベルグへ向かう

コートの汚れた服を、台所の隣の洗濯室に置いたソフィアは台所に戻った。もう一度、ブーツを履き、教会の外の食料庫に向かい、さっき置いてきてしまったバスケットの中にジャガイモ、にんじん、玉葱などの野菜を入れると、教会の台所に戻った。


戻るとそこには父のハンスがいた。

「さっきの男、大丈夫そうかい?」心配したハンスがソフィアに尋ねた。


「大丈夫だと思いますよ。その人なら今、客間で寝ています。お父様、心配なら後でその方に朝食をもっていきますから、その時に一緒に行きますか?」とソフィアは父に答えた。


「そうだね、一応顔を見てみたいから、一緒に行ってもいいかい?」


「わかりました、では朝食ができたら、お父様を呼びにいきますから、それまで部屋で待ってて下さい」と答えた。少し安心したのか、ハンスはとりあえず自室に戻ることにして台所を出て行った。


食料庫から持ってきた野菜とベーコンを切り、ソーセジを鍋に入れて火にかけた。台所が暖まる頃に、鍋が良い具合に煮えてきた。ソフィアは黒パンを切ってそこから2キレを皿にのせ、バターを側に置いた。


2階の父の部屋に行き、ノックした。「お父様、朝食ができたのでお客様のところにもって行きます。一緒に行きませんか?」扉が開き、ハンスが出てきて一緒に階段を降りていった。台所でスープをさらに盛り、パンとバターを載せた皿と水をお盆に載せると、ソフィアはそれを持ち、ハンスと一緒にコートの客間に向かった。客間の扉をノックし、二人は部屋に入った。コートは横になっていたが、ソフィアが入ってくるのに気がつき目を開けた。


ソフィアが明るい声で「朝食ができましたよ」といい、お盆を客間の机に置いた。コートはベットから体を起こして、ソフィアを見ると後ろに初老の男が見えた。


誰だろうとコートが思ったののもつかの間、「初めまして、ソフィアの父のハンスです。この教会の司祭をしています」と言われた。


「はじめまして、僕はコートといいます。娘さんと同い年の18才です。魔力はあまりありませんが、一応魔法使いです。」とコートは挨拶をした。ハンスはコートの顔をまじまじと見たが、悪い人間ではなさそうだとわかりホッとした様子だった。


「食べ終わったら、食器は外にだしておいて下さい。後でとりに来ますから。では、おやすみなさい」ソフィアはそう言うとハンスと一緒に部屋を出た。

「ね、大丈夫そうでしょ?」とソフィアが言うと。「そうだね、大丈夫そうだ」ハンスが安心したように言った。



3日ほどたつとコートは熱もだいぶ下がり回復してきた。朝、ソフィアが部屋に入ってくると「だいぶ良くなりましたね。これくらい回復したなら、そろそろ回復魔法を使いましょうか?」と言ってきた。回復魔法はレベル2ほどまでは、治癒を促進する程度である。治りかけの時に行うとかなり効果があるので、まさに今がその時であった。回復魔法は高レベルになると一瞬で病気やけがを治すことができるが、ソフィアは残念ながらそこまでのレベルにはいっていない。王立魔法軍には高いレベルの回復の魔法使いもいるといわれているが、軍事機密に属する話のためあまりよく知られていない。

「ありがとうございました。ではお願いします」とコートは答えた。ソファイアが呪文を唱えるとコートが光に包まれた。光が消えるとコートの体調はかなり良くなった。


「ありがとうございます。このくらいなら、明日はベルグへ向けて出発できそうです。本当にありがとうございました。」とコートは目の前の天使ソフィアに向かって御礼を述べた。



その日の夕方までコートはベットで横になり明日に向けて体力の回復に努めた。外に夜の帳が降りる頃、ソフィアが部屋に入ってきて「父が最後に一緒に夕ご飯を食べませんか?と言ってますが、こちらに来られますか?」と言った。


「わかりました。すぐに行きます」とコートは返した。服を着替え、台所に向かうと、ソフィアが台所に続くダイニングに手招きした。

「こちらにどうぞ」微笑んだソフィアは天使にしか見えなかった。席には既にナイフとフォーク、バターナイフなどが、各人用に用意されていた。真ん中には切られたパンが入ったバスケットとカットされたバターがあった。台所からソフィアが熱々のスープの入った鍋を持ってきた。「では、食事にしましょう。その前にまずは祈りましょう。」と司祭のハンスが言った。二人が手を組んだのでコートも手を組み、「天にまします我らが神よ、、、」から始まる二人の祈りの言葉をコートも後に続いて述べていった。


食事が始まると司祭のハンスから今までのことをいろいろ聞かれた。コートはこれまでの自分の身の上を話し始めた。魔法学校を卒業したものの魔法レベルが上がらず、王立魔法軍には入れなかったこと。既に父母はいないので故郷には帰るアテもないこと、卒業後は農作業や小さな護衛のバイトをしながら、北のベルグを目指してこと。護衛の仕事とコートが言ったとき、ソフィアの目が少し輝いた。

「ベルグはトラキア帝国との国境の街なので、僕みたいなものにも少しはおいしい仕事があるのではないかと思って行こうと思ったのですが、結局この大雪に巻き込まれてしまいました。でもおかげで助かりました、このご恩は一生忘れません。」コートはそう言った。


いろいろ3人で話したが、食事の終わり頃にソフィアがハンスに向かってこう言った。

「お父様、ちょっと色々買い物をしたいので、私もベルグに行ってもいいですか?」

「あそこは国境の街でいつ戦争が始まるかわからないので、危ないからダメだと何度も言ってるじゃないか」珍しくハンスが語気を強めた。

「護衛がいればいいでしょ?コートさんと一緒に行きますから?ねえ、いいでしょ。お父様」

「コート君がいいとは言ってないじゃないか?」ソフィアはコートの方を見て、

「コートさん、一緒に行って下さりませんか?父はこの通り心配性なので、ベルグは危ないからと行かせてくれないのです」。

ハンスはソフィアに向かって「行きはコートさんと一緒に行っても、帰りはどうするんだ?結局一人じゃないか」と言った。ソフィアは不満げではあったが、残念そうに下を向いてしまった。


ソフィアを気の毒に思ったコートは「わかりました。ソフィアさんにこれほど親切にしていただいたので、帰り道も僕が一緒に帰ってきます。それから一人でもう一度ベルグに行きます。どうせ急ぐわけでもありませんから」と言った。

「コートさん、ありがとうございます。ねえ、お父様、コートさんもこう言って下さるのですから、いいでしょう?」とソフィアは父に向かってそう言った。


「あー」とハンスは大きなため息をついた。どうしようもない状況になってしまったと思った。しかし、修道院からの誘いを断りわざわざこの小さな教会に帰ってきてくれた娘の願いをむげに断ることもできず、ハンスは「すまないが、コート君、娘の往復の護衛を頼めるかい?」と言った。

「大丈夫です、お任せ下さい。」とコートは答えた。

さあ、出発だ

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