ベルグへ向かう山道
翌朝、コートはおばさんの忠告に従い、かなり早く宿を出発し、急いでベルグを目指した。
普通に歩けば、ちょうど夕方に到着するところに宿場町のようなものがあるのだが、かなり急ぎ、昼過ぎにはその宿場町に到着できた。頑張れば今日の夜遅くにはベルグにつけるかもしれない、そう思わせる時間だった。木枯らしが朝よりだいぶ強くなっていたため、これから雪が降るかもと思ったが、なにしろもうベルグは目と鼻の先なのだ。コートはこのまま先を急ぐことにした。
この町からベルグへは山を越える道となる。山の夕暮れは早く訪れるが、それでもコートは進んだ。
寒さにおびえながら必死に急ぎ、夕方には山頂付近を越えて下り坂に入った、少し開けたところでコートの目はベルグの町の灯を視界の遠くに捉えた。もうこの山を下りきれば着く、コートは一気に山を下り始めた。
しかし冬を迎えた山の夕暮れは早い、あっという間に森の木々で夕焼けがなくなり周囲は真っ暗になった。コートはマッチをすり、枯れ木の枝に火をつけ、そこに魔法で風を上手にあてて松明を作った。とりあえず灯りはできたが、周囲は真っ暗なため下り坂を慎重に下るしかなくなった。やがて風が少しずつ強くなり、気温も低下してきたなと思った時、とうとう雪がちらつき始めた。マズイと思ったが、今更来た道を引き返すこともできないため、下るよりほかはなかった。
ほどなくして、雪は積もり始め、靴が雪で冷たくなり、そのうち靴が雪の厚みに埋もれだした。コートは必死になって先を急いだが、雪に足をとられ、なかなか思うように進めない。このままでは遭難する、コートは恐怖した。炎の魔法が使えれば暖をとることができるが、コートは風魔法である。この状況ではなんの役にもたたない。
気温はどんどん下がり、雪が風に舞い始め、視界がドンドン悪くなっていった。コートは道に迷わないように慎重に慎重に下っていった。
山を下り始めてどれくらいたっただろう。今年最初の雪はドカ雪となり、膝下半分くらいまで積もっている。雪は降り続けているが、幸いなことに風が減ってきたため、道はなんとかわかった。しかし積もった雪に足をとられ体力はどんどん減っていく。
もうどのくらい歩いたのかもわからないほど歩き続け、とうとうもう一歩も歩くことができないほどにコートは疲れ切ってしまった。どこまでも続く森の暗闇の中でもうダメかと諦めかけた時、木々の間の左の視界に教会の釣り鐘塔が見えた気がした。
コートは最後の力を振り絞って前へ進むと、ついに森を抜けた、同時に開けた平坦な場所の左側に教会が見えた。積もった雪と雪明かりで幻想的な感じである。綺麗だと思わず口にしたが、その息はすぐに真っ白くなった。気温はドンドン下がってきている。
ベルグからこの山まで参拝にくる信者がいるのかもと思わせるほど、大きくはないが山の中としては荘厳な石造りの教会である。
コートは正面の入り口の重そうな木の扉を、誰かいませんかと思いっきり何度も何度も叩いた。しかし、中からは応答はなかった。雪に音が吸収されてしまっているのか、辺りはシーンとしてる。深夜と呼ぶには遅く、早朝というには少し早い、人が最も寝静まっている時間のため無理もない。中に人がいても熟睡している時間だろう。しかし、このまま外で寝てしまったら、間違いなく凍死してしまうほど外は寒い。教会の敷地の中に風をしのげる他の建物はないかと教会の周りを見て回った。
すると奥の方に小さな石造りの小屋が見えてきた。正面の真ん中に木製の小さな扉があり、鍵がかかっていそうだったが、風の影響で少し隙間がみえたため、扉を開けようとすると開いた。どうやら鍵を閉め忘れたのだろう、「よかった」と思わず口にし、積もった雪を少しかき分け中に入った。扉を閉め、荷物を下ろし、コートはようやく石の地面に腰をおろした。
「助かった」そうつぶやいたが、座った場所の土からすごい冷気が上がってくる。すこし落ち着いて周囲を見渡すと、ジャガイモ、カボチャなどが見えたため、ここは教会の食料庫なのだろうと思った。立ち上がって中をうろつき筵のようなものを見つけると、それを下に敷きもう一度座り直した。
食料庫の中は風がしのげるだけで、酷い寒さがコートを襲った。しかし、とても疲れていたコートは体を横たえると、しばらくは睡魔に打ち勝とうと努力したが、ほどなくして眠ってしまった。
次回、ヒロイン登場です。やっとかww




