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落ちこぼれ魔法使いコート  作者: アールR
3/8

(3)バズで一泊

旅立ちまでもう少し

 アルカラン王国の首都バズは大きな楕円形の3重の石作りの城壁に囲まれた都市である。バズ城の門は防衛のため巨大な門が1箇所あるだけである。各城壁の間も防衛のため1箇所ずつとなっている。最も真ん中のやや小高い丘の上には壮大で絢爛豪華な大きな王宮が建っている。そこは王国の政治の中心であり、また王族がそこで暮らしているため、王族に仕える召使や女官達もいる。


真ん中の城壁部分は王国に仕える貴族の屋敷、特別に許可された有力者の屋敷、王宮を警備する騎士団や魔法使いが待機する駐屯地や召使や女官達の小さな官舎がある。万が一、敵が侵攻した時に篭城するのに必要となる膨大な食料を貯めている食糧庫などもある。一番外側は一般庶民の生活の場である。大小様々な住宅、魔法学校、騎士学校、官吏養成のための大学、公園、商店、市場、武器商店、魔法書を売ってる本屋、宿屋、食堂、酒場、売春宿、奴隷商店などおよそ人間が暮らしていくのに必要なあらゆるものが揃っている。

 

魔法学校を出発したコートは大きな重い荷物を背負いながら、様々な地方に行く輸送業者や商人達の発着場を目指した。発着場は物資の出し入れがしやすいように、巨大な門の脇にある。発着場に着き奥へ入って行くと、すぐに護衛受付は見つかった。

コートは受付で係の人に自分のステータスカードを見せた。係の人は無表情でカードを受け取ったが、コートのカードにある魔力1の文字を見て仰天した。バズの護衛の仕事は剣術または魔力が2以上でなければ、依頼が来ることはまずないからである。


係の人は冷たく、「バズでは剣術か魔力が2以上ないと仕事なんかないぞ」とコートに言い放った。やっぱりかとコートは落胆したが、寮長の言った通りでもあったので諦めて、係の人からステータスカードを返して貰うと、そのまま来た道を重い足取りで戻って行った。


発着場の門の脇で、コートは「これからどうしよう」と独り言を呟き、途方にくれた。しばらくいろいろ考えたが良い考えが浮かばなかったのと、朝から何も食べていなかったのでお腹がすいているのに気付き、とりあえず近くの食堂に入った。メニューはいろいろあったが、懐具合から一番安い、1個のパンとミルクのモーニングセットを注文した。


「本当にこれからどうしよう?」席に座り、パンをかじりながらコートは自問自答した。しばらく考えた後、他にすることが思いつかなかったので、寮長が言ってた魔法書を買いに行くことにした。最後のパンをミルクで流し込み、お勘定を払うとコートは再びバズの街中へと入って行った。

 

魔法書を売っている本屋は、バズ東側のじめっとした暗い地区にある。入学以来魔力が1から全く伸びなかったコートは、魔力を伸ばすきっかけを掴もうと、何度か魔法書を買いに来たことがあった。「買っても全然ダメだったんだよな」、かつてのイヤな記憶が蘇ったが、とりあえず本屋の中へ入った。


以前から何度かコートを見たことがあった老店主は薄暗い店の中を風属性の魔法書を探してウロウロしているコートに声をかけた。「何をお探しで?」。「風属性の本がほしい」」とコートは返した。「風なら、その棚の裏にあるよ」、「ありがとう」、コートはそういうと、棚の裏へと行った。


そこにはいろいろな風属性の本があった。1から始める風属性。風属性の全て、どこかで見たようなタイトルの本が並んでいた中で、<風魔力5以上の魔法集>という薄めの本が目に止まった。「5以上か」、コートには全く無縁なものではあるが、魔力5への憧れからその本を手に取り、中を開いた。そこには学校でも聞いたことがないような凄い魔法が書いてあった。


「凄いな」と心の中で呟くと、コートはその本が欲しくなり、裏の値段を見た。1万ギニー、今のコートにはびっくりするほど高い値段だったが、かなり悩んだ末にコートはその本をレジへに持って行った。コートの成績があまりさえないことを在学中に同級生から聞いていた老店主は、どうしてこれを買うのかなという顔をしながら売ってくれた。


店を出た瞬間、衝動買いをしたことをとても後悔したが、まあ、いいや、コートはそう思い直すと、これからの旅に必要となりそうな物を買うために、バズの市場や店へと向かった。そうこうしているうちに夕暮れとなった。明日からバズ近くの小都市や村に行き輸送業者や商人の護衛の仕事を探すことにしたコートはバズの宿屋街に行き、一番安い一泊朝夕食付の宿屋に泊まった。

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